なべやかん遺産|「ゴジラvs.コング」 芸人にして、日本屈指のコレクターでもある、なべやかん。 そのマニアックなコレクションを紹介する月刊『Hanada』の好評連載「なべやかん遺産」がますますパワーアップして「Hanadaプラス」にお引越し! 今回は「ゴジラvs.コング」!

半端ないワクワク感

皆さん、映画『ゴジラVSコング』はもうご覧になったかな?

コロナ禍が続き、緊急事態宣言が繰り返され延期が続いていた『ゴジラVSコング』が、やっと映画館で公開された。映画を劇場で観られる幸せ、ましてや大画面で怪獣映画が観られるのは極上の幸せだ。

わたくしなべやかんにとってゴジラ、キングコングが登場する映画を観るのは趣味であり仕事であり使命である。

劇場の売店に行った時も「パンフレット下さい」「普通版ですか、特別版ですか?」と店員さんとやり取りした時も、頭の中で何も考えず即答で「両方下さい」と返事していた。

会計で初めて値段を知り、どちらも手にしたが、もちろんこれもコレクターとしての使命である。

本作はワーナー・ブラザースとレジェンダリー・ピクチャーズが手掛ける「モンスターバース」の4作目。2014年の『GODZILLA ゴジラ』から始まり2017年の『キングコング: 髑髏島の巨神』、2019年の『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』と前振りがあり、日本を代表する怪獣とアメリカを代表するモンスターの対決が実現した。

2014年の段階では、キングコングと戦う事になるなんて考えもしなかった。7年後、コングと戦うわけだが、ある程度の時間を使って対決が実現するのってワクワク感が半端ない。ゴジラ映画がシリーズ化すればキングギドラが出て来るって思うのは普通だが、同じキングでもコングは別。

どちらも国を背負ったトップスターだし映画会社の垣根もあるので簡単には戦えない。

東宝が作った『キングコング対ゴジラ』(1962)や『キングコングの逆襲』(1967)はキングコングの版権がおりないので商品化されないのが悲しい。ただ、突然版権がOKのタイミングが僅かな期間あったりするので、そのタイミングは怪獣マニア界はお祭りになる。様々なメーカーが版権を急いで取り商品化されるが、一瞬で版権許諾NGになってしまう。

許諾OK情報を知らなかったメーカーは泣く事になり、悔しがっている人を何人も見た。

キングコングの版権が取れなかった頃のソフビ。商品名はジャイアントゴリラ。
コング三体。左から1976、1962、2021版のコング。

「オマージュ」を思わせるシーンも

『ゴジラVSコング』をまだ観ていない人の為にあまりネタバレせずに書くが、今回の映画は「オマージュ?」と思わせるシーンが多々ある。

コング輸送のシーンは『キングコング対ゴジラ』(1962)、コブラのような新怪獣・ワーバットとコングの戦いは『キングコング』(1976)のオマージュを感じる。ワーバットの口を引き裂いてくれたらキングコングと巨大蛇の戦いが重なったのに。

コング輸送シーンは楽曲をそのまま『キングコング対ゴジラ』から持って来ても良かったな。もし使われていたら、鳥肌ものだ。失禁してしまったかもしれない。

今回のコングに関して「おっ!!」と感じたのは、鼻から上の顔のアップ、つまり目や目元が1933年のキングコングの顔とだぶる所が良かった。1933年のキングコングはゴジラ誕生のきっかけでもあるので、コングの歴史を感じられる。

1962年に日本で作られた『キングコング対ゴジラ』では、両者の対決はドローで終わったが、今回は決着が付いたのも良かった。そして、早い時期に玩具でネタバレしてしまったメカゴジラ登場で更なる演出が用意されている。これは是非劇場で観て貰いたい。

ムービーモンスターシリーズのゴジラとコング。

なぜハリウッドはあのゴジラで良いと思えるのか

今回の映画は人間ドラマ少々、あとは怪獣をたっぷり見せてくれている。迫力あるシーン、構図の素晴らしいシーンが多々あり満足度数が高い。

がしかし、ただ一つ文句がある。それは、ゴジラのデザインだ。モンスターバースのゴジラからは本来のゴジラのかっこよさを感じられない(致命的)。

日本で最初にゴジラを作った人は利光貞三さんだ。粘土で雛型を作り、人が入るぬいぐるみを作った。利光さんこそ日本の怪獣着ぐるみ界の神である。その後、多くの怪獣作りの神が誕生するが、利光さんは別格だ。

ゴジラ作りは利光さんから、安丸信行さん、小林知己さん、品田冬樹さん、若狭新一さんへと継承されていった。今までと違うシン・ゴジラ(竹谷隆之さんが雛形制作)ですらシルエットは利光さんの作った初代ゴジラである。

なぜハリウッドはあのゴジラで良いと思えるのかがわからない。

そして、あのゴジラデザインにOKを出した版権元の東宝も理解出来ない。ゴジラをどうデザインしようが自由だが、先人をリスペクトせずカッコ悪いデザインにする事は罪である。

もしも今回のゴジラが本来のカッコ良いゴジラであったら、商品の売れ方も違うだろう。

モンスターバースのゴジラでは自分自身もあまりフィギュアを買わない。先人をリスペクトし継承されたデザインだったら、俺は破産するほど玩具を買う。

ゴジラの良ければこの先もお金をガンガン生んでいく。

多少見慣れて来たけど、やっぱり駄目だよね。
超カッコ悪いメカゴジラ。このデザインも問題アリ。

ゴジラを作った6人を学校の教科書に

前々から、なべやかんが言っている事がある。ゴジラを作った6人を学校の教科書に載せて欲しい。

日本を代表するキャラクターを作った人達なのだから、その資格はあると思う。この事によって、クリエーターの価値も上がるのではないだろうか?

思いっきり文句を書いてしまったけど、お金も尋常じゃないくらい使っているし、人生の殆どをゴジラに費やしているし、毎日ゴジラの事を考えて暮らしているので許して欲しい。

ちなみにキングコングも同じくらい好きだ。

人生を狂わされたのはゴジラよりキングコングの方が先だったからね。1976年のリメイク版に登場したキングコングの着ぐるみは最高にカッコ良かった。

これを作ったのは、ハリウッドで猿を作らせたら右に出る者はいないとまで言われたリック・ベイカー氏。リックさんに会った時、「あなたのコングを見て人生が狂いました」と伝えると「ソーリー」と笑いながら謝ってくれた。最高に嬉しかった瞬間。

ゴジラとコングには人生を変えられた。皆さんも『ゴジラVSコング』を観て人生を変えられてみてはいかがでしょうか?怪獣映画は劇場の大スクリーンで鑑賞して下さいね。迫力が違うので。

なべやかん

© 株式会社飛鳥新社