【競泳】萩野公介 東京五輪はメダルなしも…こみ上げた涙「金メダルよりも大切なものをみんなからもらっていた」

レース後に互いをたたえ合う瀬戸(左)と萩野

東京五輪競泳男子200メートル個人メドレー決勝(30日、東京アクアティクスセンター)、萩野公介(26=ブリヂストン)は1分57秒49で6位だった。

充実感が漂っていた。出場した12年ロンドン、16年リオ五輪でメダルを獲得してきた萩野は今大会、表彰台に立つことはできなかったが「やりたいレースができたし、集中して臨めた。何よりも(瀬戸)大也(TEAM DAIYA)と一緒に泳げたし、平井(伯昌)先生に見てもらったし。一つひとつ思い返していくと、いい1日だったなと思いますね」と振り返った。

リオ五輪後は「もっといい結果が出ればいい」と常に結果を追い求めていた萩野だが、19年には原因不明の不調で無期限の休養。復帰後もタイムが伸び悩み、400メートル個人メドレーを回避して200メートルに絞っても思うような泳ぎができなかった。

こうした経験から競技との向き合い方が徐々に変化したという。

「前ばかり見てしんどいなと思って、パッと後ろを振り返ってみたときに応援してくれる人、支えてくれた平井先生をはじめ、僕の後ろにはたくさんの人がいることに気づけた。言葉が悪いかもしれないけど、金メダルが本当にこれっぽっちのものに感じて…。こんなものよりもたくさん大切なものをみんなからもらっていたなと感じたら、水泳を続けてよかったなと思います」

こうして内に秘めていた思いを明かした萩野は「ごめんなさい…」と、こみ上げる感情を抑えることができなかった。重圧からの解放感、周囲への感謝、様々な思いから出た涙だった。

出場種目が終了し「ひとまずは、というところはありますね。未来の気持ちはまだ誰にも分からないですけど、今ある僕の気持ちを大切にすると思うならば、この東京五輪は今までの五輪で幸せだったということです。それだけです」と萩野。今後について明言は避け、まずは心身を休めることになりそうだ。

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