直江津の夏が来た! 直江津衹園祭になおえつうみまちアート 直江津の街が一番盛り上がる季節

 夏が近づくと直江津の人の多くはそわそわします。〝一大イベント〟の「直江津衹園祭」が近づいてくるからです。新型コロナウイルスの影響で昨年に続いて今年の衹園祭も神事のみを行い、みこしの川下りや花火、「御饌米奉納」などは中止となってしまいました。しかし祭りに対する思いが途切れることはありません。上越市立水族博物館〈うみがたり〉、〈無印良品 直江津〉、〈直江津D51レールパーク〉など魅力的な施設、店舗が次々にオープンしている直江津。今年の夏は現代美術の一大イベント「なおえつうみまちアート」も開かれます。

八坂神社の夏祭り 直江津19町内参加

 「直江津衹園祭」は直江津駅前通りにある八坂神社の夏祭りで、毎年7月23日から29日まで開かれています。八坂神社のみこしは23日に高田に運ばれて高田の街を渡御し、26日夕方に稲田から関川を船で川下りして直江津に戻ります。前半は高田、後半は直江津の祭りです。

 「直江津衹園祭」に参加するのはあけぼの、旭区、荒川町、安国寺、石橋一・二丁目、沖見町、栄町、塩浜町、住吉町、善光寺浜、天王町、東雲町、浜町、福永町、本町・横町、港町、御幸町、八幡、四ツ屋の19町内。各町内は順番にみこしを担いで町内を巡り、28日夜に神社の地元の御幸町が還御祭(かんぎょさい)でみこしを神社に納めます。

 27日から29日まで、各町内は屋台の巡行を行います。衹園囃子の笛・太鼓を奏でながら直江津の街を練り歩きます。屋台は29日夜、八坂神社の前に集まり、若衆が参道を走って米俵を奉納する「御饌米(おせんまい)奉納」でクライマックスを迎えます。

高田城築城を機に高田へも〝出張〟

 みこしが高田に出向いて祭りを行うようになったのは、江戸時代はじめに松平忠輝が港町にあった福島城から高田城に居城や城下町の住民、寺社などを移してからだと言われています。八坂神社は直江津が衰退しないよう移転を辞退し、代わりに高田に〝出張〟する形になったと伝わっています。高田城完成4年後の元和4(1618)年の文献に高田藩が「恒例により玄米五石を寄進する」とあり、少なくともそのころは恒例になっていたことがわかります。

 郷土史に詳しい〈北越出版〉代表の佐藤和夫さんは「直江津と高田が上越市として合併したから衹園祭を高田でもやるようになったと思っている人が増えている」と話します。旧高田藩士が明治時代に書いた『頸城郡誌稿』には、松平忠輝の前に福島城で越後を統治した堀氏が衰退した八坂神社の再興に力添えをして、そのお礼として福島城下で衹園祭を行ったという記述があります。その慣例が高田に移っても続いたのではないかと話してくれました。

「直江津衹園祭」の歴史を説明する佐藤和夫さん

中止でも伝統をつなげる

 「直江津衹園祭」は大勢が参加し、故郷の祭りに参加したいと全国各地から帰省して参加する人も多いため、コロナ禍の状況では実施が難しくなりました。その状況の中、「直江津衹園祭」に参加する各町内の青年会代表らでつくる〈直江津地区連合青年会〉の笠原勇気会長は今年、各町内に祇園囃子の練習を呼びかけました。

 笠原勇気会長は「中止が2年続くとブランクは3年になる。特に子どもたちに伝統をつながないといけない」と思いを話します。練習の期間だけでも直江津に衹園囃子の音色が聞こえると雰囲気が盛り上がります。また「直江津衹園祭」会期の26日から29日まで、家庭や事業所などに例年通り提灯や灯籠の設置を呼びかける「直江津衹園祭 提灯・灯籠プロジェクト」を昨年に続いて行います。これも直江津に少しでもにぎわいをもたらし、来年以降につなげることを目的としています。

 「年齢も立場も関係なく、町内でいいコミュニケーションができる。若い世代も青年会で1人の大人として接してもらえる」と笠原会長は衹園祭がもたらす地域の輪について説明しました。祭りがあるから近所の人と話す機会が増え、交流がうまれています。

直江津地区連合青年会会長の笠原勇気さん

現代アートが直江津にやってくる

 「なおえつうみまちアート」は直江津地区の4会場で現代美術作家8組が作品の展示やアートイベントを行います。会期は31日に市民向け前日祭を行い、翌8月1日から9月26日までとなります。会場は海岸の船見公園周辺会場、うみがたりに隣接する〈直江津屋台会館〉、〈三・八の市〉近くの〈ライオン像のある館(旧直江津銀行)〉、駅前通りと〈エルマール〉と結ぶ安国寺通りの特設会場です。

 このイベントは昨年、〈エルマール〉に〈無印良品 直江津〉を出店した〈良品計画〉と〈頸城自動車〉、上越市の3者で地元活性化を目指して締結した「地域活性化に向けた包括連携に関する協定」に基づいて企画されました。街なかに現代アートを飾り、多くの人に直江津で街歩きをしてもらうことを目指しました。

 当初は隣接する十日町市、津南町で長年開かれている有名なアートイベント「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2021」と連携し、観客を「なおえつ うみまちアート」にいざなう計画も立てていました。

 しかし新型コロナウイルスのため「トリエンナーレ」は延期となり、「うみまちアート」も地域外に呼びかけて来場者を増やす方向から、住民に直江津の良さを再認識してもらい地元を活性化する方向へと目的をシフトしました。

 いきなり現代アートを街なかに飾られても、なじみもないし見方もわからないという人も多いと思います。直江津在住で〈うみまちアート実行委員会事務局〉を務める〈小林古径記念美術館〉の宮崎英俊館長は「好きか嫌いか、もう一度見たいかなど、自分の判断で楽しめばいい」と教えてくれました。現代アートの観賞になじみのない人も、アートに触れやすいこのイベントを機に足を運んでみては。

「うみまちアート」の会場となる船見公園で語る宮崎英俊館長

 展示を予定している作品の中には海で拾ったものや、廃校になった学校に残った道具など身近なものを素材にしたものも多くあります。会場では作家や宮崎館長、イベントのキュレーター(学芸員)の鈴木潤子さんが作品の解説をしてくれます。何より身構えず自然体で作品と対することが一番だそうです。

 直江津での現代アートの大きなイベントは1988年、上越市出身で大地の芸術祭の総合ディレクターを務める北川フラムさんの「アパルトヘイト否 現代美術展」以来だそうです。高校時代に「新潟現代美術家集団GUN」の影響を受けたという宮崎館長は「子どもたちや若い世代に見てほしい。作品そのものだけでなく、発想の豊かさが感じられると思う」と願いを話しました。

うみまちアートの開幕を前に作品の1つ、刺繍のシャツの撮影会が行われた

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