よくある相続トラブルTOP3、不動産共有に財産非開示…気になる第1位は?

超少子高齢社会の日本では、2025年には団塊の世代が後期高齢者である75歳に達し、国民の3人に1人が65歳以上となることが予想されています。その際に懸念されているのは、医療や介護など社会保障費の急増だけでなく、相続トラブルの増加です。

親が亡くなってから自分はどのように資産を受け継ぐのか、また自分の死後に子どもにどう資産を相続するのか。相続トラブルの回避をしつつ、相続税の負担も軽くしたいですよね。

そこで今回は7月15日に行われた相続に関するメディア向けセミナーの内容から、よくある相続トラブルトップ3や相続準備時に気をつけたいポイントを紹介します。


相続トラブルは20年間で約1.5倍に急増

セミナーを主宰したはなまる手帳は、相続対策の悩みや不安を持つ人が葬儀、お墓、税務、法務、FPなど終活や相続に関する専門家につながることができるプラットフォーム「はなまる手帳」を運営する会社です。同社代表取締役・吉野匠さんと、相続実務士・曽根惠子さんによる最新相続事情に関するディスカッションが行われました。

総務省の統計によると、遺産分割事件の調停・審判の申し立て数は1999年に10,645件だったのが2019年には15,842件と、20年間で約1.5倍に増加しています。この数は今後もさらに増えていくと予想されています。また、令和元年度の遺産の価額物件数を見ると、1,000万円以下が34.0%、5,000万円以下が42.6%でした。相続トラブルは多額の資産を扱うケースが多いイメージがありますが、意外にもほとんどが一般的な資産を持つ家庭で起こっていることがわかります。

これほどまでに相続トラブルが増えている背景には、核家族化と相続対策をしている人が少ない点があると吉野さんは話します。相続対策云々の前に家族間コミュニケーションの希薄化によって骨肉の争いが激増してしまうそうです。

はなまる手帳の調査によると、親世代は「話すほどの資産がない」と考え、子ども世代は「話しづらい」と感じていることがわかりました。また、相続対策をしている人は子ども世代で10%、親世代で12%という低い結果にとどまりました。

この点について曽根さんは「話すほどの資産ではないと思っている家庭ほど揉めています。資産が分けにくい、分けたくない思いがある人ほど対策をしなければいけません」と断言。蓄積した感情が左右してしまう相続トラブルは、家族間コミュニケーションと遺言書作成や生前贈与といった生前対策によって避けられると話しました。

よくある相続トラブルTOP3

曽根さんによると相続トラブルには傾向があるそうです。セミナーではそのトップ3が実例を交えて紹介されました。そうならないためにはどのような対策をとればよいのか、曽根さんの解説とあわせてみていきましょう。

第3位:不動産が分けにくく揉めるケース
【例】相続不動産の共有・分割で話がまとまらない
母親は自宅とアパートを相続し、ビルとマンションを子ども3人が3分の1ずつ共有。しかし共有したことで、子どもたちの間にはすぐに感情の対立が発声。売却して等分に分けることや母親が亡くなった後の相続(二次相続)をアドバイスしても話がまとまらず、現在も膠着状態になっている。

「分けにくい不動産については、父親があらかじめ遺言書を残してさえいればトラブルにならなかったでしょう」(曽根さん)

第2位:相続人の一方が財産を開示しないケース
【例】亡くなった両親の預金通帳を管理していた長女が次女に通帳を見せない
両親が亡くなった際に両親と同居をして預金通帳を管理していた長女が次女に通帳を見せなかったことからトラブルが発生。次女が銀行で取引履歴を確認すると長女が両親の預金から多額の現金を引き出していたことがわかり、姉妹は絶縁状態に。

「遺言書があればよかったのですが、なくても贈与や財産の内容は生前にオープンにすべきです。また相続では隠し事をしないことが必須。全てを情報共有しないと揉めてしまいます」(曽根さん)。

第1位:主張が対立するケース
【例】介護を負担している分、多く相続したい
父親の介護を長男の妻がしているため、将来的には「妹や弟よりも自分が多く相続すべき」と考える長男から相談があった。

「2019年7月から特別寄与料という制度が導入され、相続人以外の親族が無償で被相続人の介護等を行った場合に金銭を請求できるようになりました。しかし、被相続人が亡くなった後では難しいこともあります。このケースで最もいいのは、父親が長男の妻にも配慮する旨の遺言書を自分の意志で書くことです。相続配分を決める寄与料については、介護の記録をしておくことも大事でしょう」(曽根さん)

曽根さんによると、相続対策の基本は「生前対策」、遺産分割でもめないよう被相続人が生きているうちに準備をしておくべきだそうです。さらに、被相続人の意思確認が取れないと遺言書作成や贈与ができなくなるとか。認知症になる前の対策がよいでしょう。

そして曽根さんが念をおすのが「普段から家族間コミュニケーションを取ること」です。遺言書や生前贈与のためだけではなく、家族間でしっかり情報を共有することで、不要なトラブルが減らせるといいます。

相続税節税のポイントは金融資産と不動産の評価の違いを知ること

相続において気になるのはトラブルだけではありません、相続税です。曽根さんは「親が元気なうちに、親の資産をどう処理しておくかで自身が払わなければいけない相続税も大きく変わってくる」と話します。

具体的には、金融資産と不動産では評価のしかたが違うことを理解すること。節税と収益のためにも金融資産ではなく不動産で持つほうがメリットは大きくなるそうです。

たとえば不動産に関しては、子どもの誰かが同居をしていれば土地の評価が2割で済むという特例が使えます。また現金の預金があるなら非課税枠がある生命保険に加入しておいたり区分マンションを購入して貸したりすることで、大きな節税効果を生むそうです。

また、駐車場も更地だと評価が下がらないのでマンションを建築したり空き地は売却して区分マンションを購入したりすることがおすすめだとか。こうした生前対策をしておけば相続税をゼロにすることは不可能ではないのだそうです。

「まだまだ親は元気だから……」と思っている今だからこそできる相続の生前対策。親の死後に大変な思いをしたり親族間でトラブルに遭ったりしないように、皆さんも早め早めに対策していきたいですね。

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