【高校野球】カウント1-0から投手交代 ノーシードから4強に導いた帝京・前田監督、驚きの選手起用

帝京・前田三夫監督(2020年撮影)【写真:荒川祐史】

準決勝は東京ドームで二松学舎大付と対戦する

全国高校野球選手権東東京大会は30日に準々決勝2試合が行われ、駒沢球場では帝京が東亜学園に5-3で勝利。江戸川球場では修徳が延長10回4-0の劇的サヨナラ勝利で小山台を破った。8月1日に東京ドームで行われる準決勝は関東一-修徳、帝京-二松学舎大付の組み合わせになった。さまざまな戦術を駆使してノーシードから勝ち上がってきた帝京・前田三夫監督はこの日も驚きの投手起用で東亜学園の反撃を断ち切った。

72歳の名将は静かに、そして鋭い視線で戦況を見つめ、勝負どころで手を打った。2-0で迎えた4回1死満塁。先発・高橋蒼人投手(1年)が打席に立つと、初球にスクイズを敢行。ファウルになり、1度ヒッティングに戻すも、追い込まれてから再びバントの構えを見せる。スクイズを警戒する相手を揺さぶり、カウント2-2の5球目から遊撃内野安打で追加点を手にした。

継投の決断も驚きだった。5点リードの5回1死一、三塁。東亜学園の3番・松本颯斗外野手(3年)が打席に入った時だった。高橋蒼の初球がボールになったところで前田監督は一手を打った。「いっぱいいっぱいに見えた」とエースの安川幹大投手(3年)にチェンジ。松本に左前適時打を打たれるも、後続を断ち最小失点に抑えた。

春夏通じて3度の全国制覇、甲子園通算51勝を誇る前田監督の巧みな采配が今大会、際立つ。24日の明大中野との4回戦では0-1の6回1死満塁で打者・白石浩太外野手(2年)が2ストライクに追い込まれたところで、代打に横堀樹捕手(3年)を起用。その初球にスクイズを決め、同点に追いついた。

28日の郁文館との5回戦では4-0の4回1死三塁で、またしても追い込まれてから代打に横堀を送った。結果は右飛だったものの、常に“最善の一手”を繰り出して勝利をたぐり寄せてきた。

今年の東・西東京大会は、準決勝から東京ドームで初めて開催される。百戦錬磨の前田監督にとっても初めてのこと。「正直やってみないとわからないです。プレーしたこともないし、ベンチに入って指揮を執ったこともないですからね。場面が場面だから楽しみとかっていうのはないですよ」。

春14度、夏12度を誇る名門も2011年夏を最後に聖地から遠ざかる。10年ぶりの夏の甲子園出場に向け、名将が新たな舞台である東京ドームでどんな野球を見せるのか、注目される。(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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