〔海外〕2021年上半期の災害を振り返る<1月~6月>

2021年上半期(1月~6月)に発生した海外での大規模な災害、事故・事件の案件について振り返ります。

※被害の内訳については、原則的にレスキューナウによる情報取りまとめ時のものです。それぞれの記事の最終更新日以降の状況については反映されていないことがあります。

●1月
【事故】インドネシア航空の旅客機墜落
[被害]死者62人
9日14:40頃(日本時間同日16:40頃)、インドネシア・ジャカルタ発スマトラ島ポンティアナクに向かっていた、同国の格安航空会社「スリウィジャヤ航空」の国内線旅客機SJ182便が、スカルノ・ハッタ国際空港を離陸した直後にジャカルタ沖の海上に墜落し、乗客乗員62人全員が死亡した。なお、2018年10月には、ジャカルタからバンカ島パンカルピナンに向かっていた格安航空会社「ライオンエア」の旅客機が、離陸直後にジャカルタ沖に墜落し、乗客乗員189人全員が死亡する事故が発生している。

【自然災害】インドネシア・スラウェシ島でM6.2の地震
[被害]少なくとも死者90人、負傷者600人以上、家屋損壊1000軒以上
15日02:30頃(日本時間同日03:30頃)、インドネシア・スラウェシ島西部でM6.2の地震が発生し、少なくとも90人が死亡、600人以上が負傷したほか、1000軒以上の家屋が損壊するなどの被害が出た。なお、スラウェシ島付近では、2018年9月にもM7.5の地震が発生し、局地的に10mを超える津波を観測したほか、死者2000人以上、行方不明者5000人以上など甚大な被害があった。

●2月
【政権・政情不安】ミャンマーで国軍によるクーデター
[被害]5月31日時点で約840人死亡
1日、ミャンマーで国軍によるクーデターが実行された。国家顧問兼外相を務めていたアウン・サン・スー・チー氏や大統領のウィン・ミン氏など、民主派議員らが拘束、軟禁された。国軍は2020年11月の総選挙で、民主派政権が主導しての大規模な不正があったと主張しており、クーデターはやむを得なかったとしている。このクーデターを受けて、市民による大規模な抗議デモが全土で発生。対して軍は実弾を用いてデモ隊を弾圧し、国軍記念日にあたる3月27日には各地で114人が殺害された。5月末時点で、関連する犠牲者は約840人に上った。ミャンマーでは、1988年にも民主化運動が国軍によって鎮圧され軍事政権が発足、その後2011年にようやく民政移管が実現していた。

【自然災害】インドのヒマラヤで氷河崩壊により氾濫
[被害]少なくとも死者32人、行方不明者170人以上
2月7日、インドのウッタラカンド州で、ヒマラヤ山脈にあるナンダデビ山の氷河が崩壊、河川へ流れ込んだことで氾濫が発生した。流域付近の2か所の水力発電所や流域付近の集落に濁流が押し寄せ、10日時点で32人の死亡を確認、最大で170人以上が行方不明となった。被害者の多くは発電所の建設作業員らで、土砂に埋まったトンネルに閉じ込められるなどした。

●3月
【自然災害】ニュージーランド・ケルマデック諸島沖でM8.1の地震 一時津波情報発表
[被害]避難者数千人
5日08:28頃(日本時間同日04:28頃)、ニュージーランド・ケルマデック諸島付近を震源とするM8.1の地震が発生した。アメリカ・ハワイの太平洋津波警報センターは一時津波情報を発表、ニュージーランド北島沿岸部の住民らに避難命令が出され、数千人が避難した。この地震で、ニュージーランド・オーストラリアの間にあるノーフォーク島やフィジー、トンガなどの周辺国で津波が観測された。ニュージーランド付近ではこの地震の前にも、M7級の地震が2回発生していた。

【火災】バングラデシュ南東部の難民キャンプで大規模火災
[被害]少なくとも死者15人、行方不明者約400人、負傷者約560人、少なくとも焼失1万軒
22日、バングラデシュ・コックスバザールの難民キャンプで、大規模な火災が発生し、少なくとも15人が死亡、約400人が行方不明、約560人が負傷したほか、少なくとも1万軒が焼失した。同キャンプには、87万人以上のロヒンギャ難民が避難していて、その大半が隣国ミャンマーから逃れた人々であった。

【事故】エジプト中部で列車追突事故
[被害]少なくとも死者32人、負傷者100人以上
26日、エジプト・ソハグ県タフタで、線路上に停止していた列車に背後から来た別の列車が追突する事故が発生した。複数の車両が脱線・大破し、少なくとも32人が死亡、100人以上が負傷した。エジプトでは近年列車事故が多発していて、車両の老朽化・インフラの保守管理が課題となっている。なお、2019年2月には首都カイロのラムセス駅で、整備点検を終えた列車が暴走して障壁に激突し、燃料タンクが爆発し出火する事故が発生、少なくとも20人が死亡、40人が負傷している。

●4月
【事故】台湾東部で特急列車が作業車と衝突し脱線
[被害]死者49人、負傷者240人以上
2日09:28頃(日本時間同日10:28頃)、台湾・花蓮県で特急列車がトンネルに入る直前、付近の崖から線路内に転落した工事作業車と衝突し脱線した。この事故で、49人が死亡、日本人2人を含む240人以上が負傷した。2日は「清明節」の4連休の初日で混雑しており、乗客494人中122人が立ち席であったことが被害拡大に繋がったとされる。当初、作業車のパーキングブレーキをかけ損ない滑り落ちたと工事責任者から説明されていたが、虚偽の説明をしており、実際は誤って茂みに突っ込んでしまったのを重機で引きずり出そうとしたが失敗して落下したとみられている。

【その他】イラク首都の新型コロナ患者受け入れ病院で火災
[被害]少なくとも死者82人、負傷者110人
25日、イラク・バグダッドの新型コロナウイルス感染症の患者を受け入れていた病院で、患者用の酸素ボンベが爆発し火災が発生した。少なくとも82人が死亡、110人が負傷した。爆発は集中治療室で発生し、患者や付き添いの親族などが犠牲となった。死者の中には人工呼吸器を装着していた患者もいて、避難する際に酸素を外されて死亡した人もいた。イラクは紛争や資金不足などにより医療体制が劣悪な状態にあり、この病院には自動消火装置がついていなかった。

●5月
【事故】メキシコ首都で高架線路が崩落
[被害]少なくとも死者24人、負傷者約80人
3日22:30頃(日本時間4日12:30頃)、メキシコ・メキシコシティの地下鉄12号線オリボス駅付近の高架線路が崩落し、走行中の列車が道路に落下する事故が発生した。この事故で、少なくとも24人が死亡、約80人が負傷した。

【安全保障】イスラエルとパレスチナ自治区の交戦激化 停戦へ
[被害]死者240人以上、負傷者約2000人
4月中旬のイスラム教のラマダン(断食月)が始まって以降、イスラエルとパレスチナが領有権を争う東エルサレムで、イスラエル治安部隊とパレスチナ人との間で衝突が深刻化していた。それが徐々にエスカレートしていき、5月10日から、イスラエルとパレスチナ・ガザ地区を実効支配するイスラム組織「ハマス」の交戦が激化、空爆やロケット弾により双方で240人以上が死亡、約2000人が負傷する被害となった。その後、エジプトなどの仲介もあり、21日02:00(日本時間同日08:00)に停戦に入った。

●6月
【事故】アメリカ・マイアミ近郊でマンションが崩落
[被害]死者97人、行方不明者1人
24日01:30頃(日本時間同日14:30頃)、アメリカ・フロリダ州マイアミ近郊のサーフサイドに建つマンションの一部が突然崩落し、97人が死亡、1人が行方不明となった。リゾート地という立地から、一部の季節だけ滞在する所有者がいるなど居住実態は多様で、当初は事故当時に建物内にいた正確な人数が把握できず、全容把握の難しい状況が続いた。また、崩落を免れた残存部分も崩れる恐れがあったために近付けず捜索が難航していたが、ハリケーンが接近して危険が高まり、7月4日に解体された。捜索範囲が広げられたもののその後も生存者は見つからず、23日に捜索が打ち切られた。

【自然災害】北米の西海岸に記録的な熱波 各地で数百人規模の突然死
[被害]少なくとも死者約230人以上
25日頃から7月初旬にかけ、アメリカのオレゴン州からカナダ北極圏にかけて記録的な熱波に見舞われ、各地で最高気温を更新した。カナダ・ブリティッシュコロンビア州にあるリットン村では、27日から29日の3日連続で国内観測史上最高気温を更新し、29日には49.5度を観測。アメリカでは、28日にワシントン州シアトルで42.2度、オレゴン州ポートランドで46.7度を記録した。各地では熱中症と思われる突然死が多発し、ブリティッシュコロンビア州では、25日から28日の4日間に少なくとも約230人が死亡、アメリカでも多数の死者が確認された。また、気温が異常に高まった影響で、7月初旬には大規模な山火事が頻発した。

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