バンドの結成50周年を記念して毎週1本ずつ全50本の動画がYouTubeで公開されているクイーンのビデオシリーズ「Queen The Greatest」の第20弾のエピソード「Queen: 1980年 クイーンと映画 – テイク1 “フラッシュ・ゴードン”」が公開された。映像は以下から日本語字幕付きでご覧いただける。
<動画:Queen: 1980年 クイーンと映画 – テイク1 “フラッシュ・ゴードン”>
バンドにとって9枚目のスタジオ・アルバムとなった『Flash Gordon』は、彼らにとって初めての映画サウンドトラックでもある。その映画とは1980年に公開されたSF映画『フラッシュ・ゴードン』だ。聴覚的なスペクタクルを得意とするバンドにとって、このSF作品は完璧にフィットすると思われたが、当初、映画のプロデューサーのディノ・デ・ラウレンティスには疑念があった。
アルバム『Flash Gordon』の制作は、バンドの8枚目のスタジオ・アルバム『The Game』のレコーディング・セッションと並行して開始された。映画サントラの制作はバンドにとって新たな挑戦となるものだったが、彼らはこれまでのアルバムと同様にクイーンらしいアルバムにすることを決意していた。
ブライアンとロジャーが語る
今回公開されたミニドキュメンタリーの中では、ロンドンのAdvision Studiosで『Flash Gordon』を映画の映像に合わせてライヴ演奏している映像を背景に、ブライアン・メイとロジャー・テイラーがこのプロジェクトの経緯をこう語る。
ロジャー「(プロデューサーの)ディノ・デ・ラウレンティスからの興味深いオファーで、エレクトラ・レコードのトップだったジョー・スミスが全体を取り仕切ってくれた。この映画はヨーロッパとイギリスでは大ヒットしたけど、アメリカでは完全に失敗したから、面白いよね」
ブライアン「でも、後にカルト的な作品になったんだよね。私は “Flash Gordon” のことをとても誇りに思っているんだ。なぜなら、ロックをテーマにしていない映画のサントラにロックが使われたのは、これが初めてだったからね」「多くの人がうまくいかないと言っていて、ディノが最初に聞いたとき、“これは私の映画には使えない”と思ったんです。でも、彼はすぐにこのアイデアに慣れ、最終的には気に入ってくれた」
ロジャー「(サントラの作曲は)実際には、ブライアンの仕事のようなものだったし、彼が多くのことを生み出した。ヘヴィ・ロックをあまり聞かない時代に、映画のいたるところにヘヴィな曲が流れてて。特に戦闘シーンは画期的なものだったね」
ブライアン「たしかに、あれが最初だったと思う」
ロジャー「そして今では、ヘヴィな音楽をサントラに使わない映画はほとんど見られなくなったよね」
ブライアン「それに、ヘヴィなギターもね」
ロジャー「そういった意味では俺たちはかなり画期的だった」
収録曲と次のサントラ
アルバム『The Game』がバンドの制作時間を占めるようになると、ブライアンがサントラの制作を主に担うようになった。タイトル曲「Flash’s Theme」は唯一のシングルとして発売されたが、それ以外にもクイーンの名曲が収録されている。特に「The Hero」は、ライブのオープニングを飾った名曲として知られており、今回公開されたミニドキュメンタリーの中では1982年6月5日にイギリスのミルトン・ケインズで行われたバンド演奏を見ることができる。
バンドが初めてサントラを担当したことで、クイーンがまた映画の音楽制作を担当するのでは、という噂が沸き起こった。ロジャー・テイラーは当時、こう語っている。
「この映画の仕事はとても面白かったし、誰かが別の映画のために本当に魅力的なオファーをしてきたら、もしかしたら俺たちは前向きに考えるかもしれない。でも、俺たちはロックンロール・バンドだし、これからもそうだと思うよ」
クイーンは、それから6年後に2作目のサントラ制作を担当することになる。それは映画とは大ヒットしたSFファンタジー『ハイランダー 悪魔の戦士』だ。この時のエピソードはまた別の機会に。
Written By Tim Peacock