老後資金「早死にするから大丈夫」と言う人へ、長生きした場合の具体的なお金の必要額を解説

「〈人生100年時代〉と言われ、老後資金などの備えについてしっかり考える必要がある」と私は話をしたり、書いたりしています。その反応として「オレは、大丈夫。きっと早死にするから」との反論をよく耳にします。

私は思わず「早死にするという根拠は何ですか?」「あなたは余命宣告でも受けたのですか」と言ってしまいたくなります。そんなときには、「残念ながら、希望通りに早死にをすることができないかも知れません。その場合はどうしますか」と問いかけます。

人の寿命は誰にもわかりません。もしかすると希望通りに早死にできるかも知れませんが、平均寿命で考えれば、半数の人が男性は81歳、女性は87歳まで生きているわけです。また男性の4人に1人は90歳まで生きる計算です。さらに言うならば平均寿命は年々延びているのです。

「早死にするから大丈夫」と言っている人に、長生きした場合の具体的なお金の必要額を解説します。


希望寿命は約77歳。しかし現実は甘くない!

BIGLOBEの「年齢による意識調査(2018年)」によると、希望する寿命と言うのは77.1歳だそうです。これは平均寿命より4年から10年ほど短い寿命です。

また、同調査によると、老後に対して不安に思っている人が82.6%です。その理由としては「老後の資金」というのが第1位で76.9%です。ここから、「老後資金に不安があるので、そんなに長生きをしたくない」と考えてしまう人が多いということが読み解けます。

しかしながら平均寿命から考えると、そうならない可能性の方が高いと思いませんか?さらに残念なことに、100歳ぐらいまで生きてしまうことだって考えられます。

つまり、「老後資金を考えたってどうにかなるものでもない」と言って思考停止になり、問題を先送りにしてはダメなのです。希望年齢は、あくまでも「希望」で、現実はそう甘くはありません。長生きをしたときのこと考えておきましょう。

また同調査によると、仕事をリタイアしたい年齢というのは、65.6歳だそうです。10代の希望は50代後半です。しかし実際には早期リタイアは夢ですね。できれば希望が実現できればいいのですが、そのためにはかなりの準備が必要です。

なぜなら、65歳でリタイアするためには、やはり老後資金がないと生活が厳しくなります。65歳の時点である程度の老後資金の準備がないと、それだけ長く働く必要があるのです。

老後資金は収支バランスで決まる

夢も希望もない話になってしまいましたが、それほど心配をしなくても大丈夫な人もいます。言っていることが矛盾しているように感じるかもしれませんが、老後資金の必要額は人それぞれなのです。

老後資金の必要額は、老後生活の収支バランスで変わってきます。

極論を言うならば、収支バランスが取れている人はそれほど老後資金の必要ありません。余裕資金プラス800万円あれば大丈夫でしょう。

たとえば、夫婦共働きであれば、厚生年金がダブルで受け取れるので、年金額の合計が月額35万円以上になるのではないかと思います。その場合、生活費も35万円以内ならば収支バランスが取れているので、老後資金を取り崩さなくても生活ができるということになります。ただし介護だったり配偶者の死亡などのトラブルに備える必要があります。そのための余裕資金は必須です。

逆に、毎月の年金額よりも支出が多い場合は問題です。この毎月の赤字額が大きいほど老後資金は多く必要になります。とくに国民年金だけという方は、注意が必要です。

老後資金の必要額とは

老後資金がどのくらい必要なのかという計算は、次のようになります。

毎月赤字額×12ヵ月×寿命

この場合の寿命とは、途中で資金がなくなっては困るので、95歳までを考えた方がいいでしょう。

65歳まで働いたとすると、老後資金が必要なのは95歳までの30年間になります。たとえば、毎月5万円の赤字だった場合は、5万円×12ヵ月×30年=1,800万円です。65歳までに1,800万円準備する必要があります。これが、ムリだとしたら、毎月の支出を見直して節約をする必要があります。

たとえば、節約に成功して毎月3万円の赤字になったとしましょう。すると下記のような計算に変わります。

3万円×12ヵ月×30年=1,080万円です。

65歳までにほぼ1,000万円の準備でOKということになります。これもムリという場合には、もう少し長く働く必要があります。もし70歳まで働くとします。もちろん節約で月3万円の赤字とします。3万円×12ヵ月×25年=900万円です。

すると準備期間が伸びて70歳までに900万円です。さらに厚生年金に加入して働くと年金額もアップしているはずですし、繰下げ受給をするとさらに年金額もアップするので収支のバランスが取れるようになります。これで、やっと老後の目途が立ってくるという感じです。

ただし、これ意外にも余裕資金は必要なので、800万円ぐらいは用意しておきましょう。

やっぱり老後資金は避けて通れない問題ですね。70歳までは働きたくない人は、早めに向き合ってiDeCo、NISAを使って賢く貯めるようにしましょう。

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