【中国】大都市でコロナ警戒体制強化[経済]

企業も自主規制、経済活動に影響

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インド由来の新型コロナウイルスの変異株「デルタ株」が7月下旬から全国的に拡大していることを受け、広東省広州市や上海市などの大都市が防疫体制を一層強化している。感染拡大の中心地である江蘇省南京市や湖南省張家界市以外にも防疫規制強化の波が広がった格好だ。自主的に従業員の移動を制限する企業も現れており、経済活動に大きな制約が加わっている。

広州市衛生健康委員会は7月31日、防疫規制の強化を発表。市民に対して不必要な省外への移動を控えることを要請したほか、直近で市外での滞在歴がある人には自主的にPCR検査を受けることを求めた。

新型コロナの感染リスクが「高リスク」または「中リスク」の地域に滞在したことがある人は自主的に社区(地域コミュニティー)に報告することや、熱やせき、倦怠(けんたい)感のある人はマスクを着用した上で病院に行くことなどを求めた。

解放日報などによると、上海市トップの李強・共産党委員会書記も30日、防疫体制を強化する方針を表明。具体的な措置には触れなかったが、既に実施している措置をさらに厳格化する可能性がある。

上海市は現在、高リスク地域からの訪問者に対して14日間の集中隔離、中リスク地域から訪れた人は14日間の社区での健康観察とする措置などを打ち出している。

北京市は1日、感染者が出た地域から北京への人の流入を制限すると発表。感染地域から北京に向かう航空便や鉄道、バスの運航・運行を暫定的に止めることを決めた。交通機関での検査も厳格化する。

同市の政府機関や国有企業の人員が中リスクまたは高リスク地域に向かうことを禁じるほか、市内で確認された感染者と居住地や勤務地が同じ人が市外に出ることも原則禁止にする。

これらの大都市の企業の一部は既に自主的な対策に乗り出している。

上海市に本部を置き、沿海部大都市に複数の拠点を持つ日系企業は7月31日から、社員の他地域への外出を禁止。緊急の外出が必要な場合は届け出を出すことを義務付けた。最近になって多くの中国企業が同様の措置を打ち出していることにならったという。

外出から戻った際にはPCR検査を受け、陰性が確認されてから出社を許可する。社員とその家族が直近で訪れていた地域が中リスクまたは高リスクになった場合、14日間の自主的な自宅隔離と2度のPCR検査を求める。

■南京と張家界が観光地閉鎖

感染の中心地である南京市と張家界市はともに、観光地の閉鎖に踏み切った。張家界市は市内全ての観光地を閉鎖。南京市は既に博物館や美術館など屋内観光地を閉鎖していたが、31日からは屋外観光地も閉鎖した。南京市は映画館やネットカフェ、カラオケなどの娯楽施設の営業も停止した。

空港の規制も強まっている。中国民用航空局(民航局)は31日、国際空港の従業員に対する防疫規制を強化すると発表した。勤務期間は特定の宿泊所に宿泊するほか、空港への移動は専用車両を使うことなどを義務付けた。南京での流行が空港従業員の感染に端を発していることを踏まえた措置とみられる。

■11省で計303人

今回の感染拡大は、7月20日から起きた南京禄口国際空港(南京空港)の清掃員の集団感染がきっかけとなった。その後は国内有数の景勝地である湖南省張家界市が新たな感染拡大の中心地となり、人の往来が活発な空港と観光地が中心地となったことで、感染は国内各地に急拡大した。

中国疾病予防コントロールセンター(中国疾控中心)の馮子健研究員は、張家界市の最初の感染者は南京空港関連の感染だったとの認識を示した。同認識に基づき張家界市と南京市関連の感染者を合算すると、一連の感染者は1日までに計303人となった。

感染者は◇江蘇省◇四川省◇広東省◇安徽省◇遼寧省◇北京市◇湖南省◇寧夏回族自治区◇湖北省◇山東省◇海南省——の11省・市・自治区にまたがる26市で確認されている。

このうち海南省は8月1日に初の感染者を確認。感染者は海口市在住で、7月20~27日に湖北省荊州市に滞在していた。27日に高速鉄道の荊州駅で、既に感染者が出ている江蘇省の企業の社員旅行グループとわずかな接触があった可能性がある。

北京市は1日午前0時~午後4時に新たに2人の感染者を確認。感染者の統計に含まれない無症状感染者も1人確認した。3人は家族で、居住地は房山区閻村鎮。張家界に旅行に行っていた。

■鄭州が新たな中心地か

今後は河南省鄭州市が新たな感染拡大の中心になる恐れがある。

河南省衛生健康委員会によると、鄭州市での新型コロナの国内感染者を31日に12人確認した。30~31日の同市の国内感染者は計33人となり、31日には無症状感染者の国内感染も20人確認した。

市内病院での院内感染が感染者急増の背景。海外感染者の入国後の受け入れ施設にもなっている鄭州市第六人民医院の従業員の間で30日以降、感染者が増えている。

感染源は判明していないが、同医院で受け入れた海外感染者が感染源となった可能性が指摘されており、南京空港関連とは感染源が異なることも考えられる。

■「追加接種必要なし」

一方で、中央政府は政府の防疫措置が奏功しているとして、国民に冷静な対応を呼び掛けている。

31日には中央政府の新型コロナ対策関連部門が記者会見を実施。国家衛生健康委員会の疾病予防コントロール局の賀青華・一級巡視員は各感染経路がおおむね明らかになっているほか、各地の感染対策が顕著な効果を発揮しているとして、「現在の防疫措置は有効に作用している」と述べた。

同局の邵一鳴研究員は「向こう1年は、ブースター接種(追加接種)の必要はない」との考えを示した。現在のワクチンのデルタ株に対する有効性に疑問の声も出る中、邵氏は「全国民が3本目の接種が必要である十分な根拠はない」と説明した。

ただ、抗体獲得後6~12カ月が経過した高齢者や基礎疾患のある人、感染リスクの高い職業に従事する人などに限って追加接種を行うことも検討しているという。

■3日で194人増

中国国家衛生健康委員会によると、新型コロナウイルス感染症の新たな感染者は29~31日に194人確認された。このうち中国本土で感染した「国内症例」は104人だった。

国内症例の内訳は江蘇省が67人、河南省と湖南省が各12人、雲南省が3人、重慶市と福建省が各2人、北京市と遼寧省、四川省、山東省、湖北省、寧夏回族自治区が各1人だった。

海外から入国後に感染が確認された「輸入症例」は90人。地域別では雲南省が37人、上海市が20人、広東省が12人、天津市が6人、福建省が5人、浙江省が3人、内モンゴル自治区と四川省が各2人、河南省と遼寧省、山東省が各1人だった。

累計感染者数は8月1日午前0時時点で9万3,005人となった。29~31日に死者は報告されておらず、累計死者数は変わらず4,636人。

無症状感染者は29~31日に81人確認された。うち国内症例は河南省20人、湖南省18人、江蘇省4人、福建省3人の計45人だった。輸入症例は36人。

新型コロナワクチンの中国本土の累計接種回数は1日までに16億5,281万9,000回となった。

中国政府によると、1日午後3時時点で新型コロナウイルスの感染リスクが高リスクとなったのは3カ所。江蘇省南京市江寧区、河南省鄭州市、雲南省瑞麗市の各市内にある地区1カ所。

中リスクは82カ所だった。江蘇省41カ所、湖南省が22カ所、四川省と河南省が各6カ所、雲南省と遼寧省、福建省が各2カ所、湖北省が1カ所となった。