浜口京子「3決でマタドール博恵になれ!」 かつての女子76キロ級ライバル・皆川博恵に猛ゲキ

3位決定戦で意地を見せたい皆川(ロイター)

気合だ! レスリング競技初日(1日、幕張メッセ)、男子グレコローマン60キロ級準決勝で文田健一郎(25=ミキハウス)がテミロフ(ウクライナ)を下し、銀メダル以上が確定。2日の決勝で金メダル取りに臨む。また、女子76キロ級準決勝では、皆川博恵(33=クリナップ)がロター・フォケン(ドイツ)に敗れ、3位決定戦で銅メダル獲得を目指す。五輪2大会銅メダルで本紙レスリング解説の浜口京子(43)が両者の戦いぶりを〝らしさ満点〟に解説。大一番に臨む2人に猛ゲキを飛ばした。

【浜口京子 気合でGo!】気合だ! いよいよレスリングが始まりました。文田選手、強かった。負ける要素がまったくありません。関節、筋力、すべてが柔軟でしなやかでまろやか。あの肉体は天下一品です(『バランス感覚もいい!』と父のアニマル浜口氏が乱入)。猫好きで、猫が癒やしの文田選手。動きも研究しているそうですね。試合を見ていたら、本当に猫に見えてきました。相手と組んでいる時、背骨をぐ~っと天井に向かって丸くして戦う様子が、猫ちゃんが毛を逆立てて威嚇する姿そのもの。人間離れしていました。

精神面も、いい状態で大会に臨めていることがわかりました。試合前にちょっとニヤッとするところや、カメラに手を振ったりするあたりは、余裕がないとできません。ライバルたちは、文田選手を徹底的に研究。得意とする反り投げを食らわないようガードを固め、なかなか脇を差せない状況でした。それでもまったく焦ることなく対応していたのは、相手の研究を見越して練習してきた証しでしょう。

攻撃だけではなく、ディフェンスの強さも際立っていました。準決勝で、文田選手が腹ばいになり、相手がローリングを試みる場面は特に感じました。あれだけ相手に体を締められているのに、体を返さなかった。1階級上の選手と、ローリングの防御を徹底的に練習してきた成果が出ていましたね。あの時は思わず私もテレビの前で、文田選手と同じ体勢で床にはいつくばり「返されるな!」と念を送っていました。

金メダルまであと1勝。必ず勝てます。私も一緒に戦います!

そして皆川選手! 準決勝、惜しかった。私のライバルでもあり、たくさん練習も試合もして、私の遺伝子が受け継がれている選手。思わず、テレビの前で大声を出して応援していました。初戦は、うまい手さばきで相手の腕をしっかりコントロールし、相手の力を逃がしてからすっとタックルに入ってポイントを奪っていました。以前は見られなかった動きで、進化の証しです。あの動きができる最重量級はそういない。これは金メダルは間違いないと思っていました。

でも、準決勝では、なかなか組み手で自分のペースに持ち込めなかった。相手も強かった。低い構えの皆川選手に、あの高身長で懐に入ってタックルでポイントを取りました。私が皆川選手と戦う時にはできなかったことを、フォケン選手はやってきました。

私もアテネ、北京と2度、五輪で3位決定戦を経験しています。準決勝で負けると、本当に悔しいんです。目指すメダルの色が変わってしまう。試合後はずっと下を向いていました。博恵ちゃん、今、どんな気持ちでいるかな…。でも、もう一度、この会場で戦える喜びを感じてほしい。メダルがあるかないかの3位決定戦のプレッシャーは、もしかしたら決勝より強いかもしれない。でも、五輪の舞台でまた試合ができる。強い気持ちで臨んでほしい。

そして、あの初戦で見せた猛牛をさばく闘牛士のような、華麗な手さばきを3決の舞台で発揮してほしい(『そうだ、組み手だ組み手!』とアニマル浜口氏)。そう、マタドール博恵だよ! ちょっと最後は強い言葉で言います。博恵! 絶対に勝て!(アテネ、北京五輪女子72キロ級銅メダリスト)

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