【東京五輪】水球女子代表は横浜の高校教諭 ベテランGK三浦の同僚評「実直な頑張り屋」

水球女子日本代表GKで高校教諭の三浦里佳子=2020年10月

 水球女子日本代表として初の五輪に挑んだ先生がいる。横浜市鶴見区の白鵬女子高教諭で、ベテランゴールキーパーの三浦里佳子(31)=日体クラブ。競技人生の区切りとして迎えた東京大会で悲願の勝利はつかめなかったが、競技に、仕事に、ひたむきな姿を見てきた同僚はねぎらいの言葉を贈る。「実直な頑張り屋。本当にお疲れさま」

◆困っている人を放っておけない

 平日午前8時すぎ。職員室で朝会が始まると、同校教諭の大野恵美子さんの心がふっと和む。

 「一目見れば、直前までプールにいたんだと分かるので」。そこにはいつも、早朝の自主練習で髪をぬらしたままの三浦がいた。

 水球部の副顧問を務める2人。三浦はコーチとして部員の指導に当たり、普段は保健体育の授業を受け持つ。数学担当で競技経験のない大野さんは、後輩を温かく見守ってきた。

 多忙な日々の合間を縫って練習する三浦から、後ろ向きな言葉を聞いたことがない。「それどころか何かあれば真っ先に手伝ってくれる。困っている人を放っておけない性格なんです」

 大きな荷物を抱えていれば、すぐ駆け寄ってきて受け取り、学校説明会の前日には一人で黙々と床や壁の掃除に励む。実直な人柄を表す逸話には事欠かない。

◆挫折経験を語った日

 ただ、三浦も失意に暮れた時期がある。前回のリオデジャネイロ五輪の世界最終予選で敗退後、代表メンバーから外れた頃だ。

 「痛々しいほどに落ち込んでいて、声を掛けられなかった」と大野さん。それでも、三浦ははい上がって代表に返り咲き、憧れの舞台にたどり着いた。

 代表復帰が決まった後に開かれた学年集会。12クラスの担任が順に生徒約300人に言葉を掛けていく。時間の経過とともに緊張感が薄れていったその時、三浦がマイクを握った。

 「私は一度、挫折を味わった。でも、諦めなければ夢はかなう」。しばしの沈黙の後、生徒から自然と拍手が湧き起こったという。「教員になって初めて見た光景でした。いつでも一生懸命な人柄は全員が知っているし、心を込めて語った言葉だから生徒の心に響いたんでしょう」

 そう振り返り、大野さんは続けた。「夢の舞台に立った経験も伝えてもらいたい」。皆がその帰りを楽しみに待っている。

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