メッツがドラ1右腕・ロッカーと契約せず 腕の状態を懸念

日本時間8月2日、メジャーリーグはドラフト指名選手との契約期限を迎えたが、メッツはドラフト1巡目(全体10位)で指名したバンダービルト大の右腕クマー・ロッカーと契約しないことを選択した。ドラフト後の身体検査の結果、腕の状態に問題があることが判明したという。メッツは契約金の減額を交渉することも可能だったが、リスクを抱えるロッカーと契約するよりも、来年のドラフトで補償指名権(全体11位)を得ることを優先した。

複数の関係者によると、メッツはドラフト後の身体検査を行うまで、ロッカーの腕の状態に問題があることを知らなかったという。メッツとロッカーはドラフト直後に契約金600万ドルで合意。交渉のうえで契約金を減額して契約することも可能だったが、メッツはそのオファーすら出さなかったようだ。ロッカーは今回のドラフトにおける最大の注目選手の1人だったが、球速が低下。徐々に球速は回復していったが、しばらくのあいだ、自身をドラフト全体1位指名候補へと押し上げた90マイル台後半のファストボールを取り戻すことができなかった。

メッツのザック・スコットGMは「これは明らかに我々が望んでいた結果ではない。クマーの今後の成功を祈っている」との声明を発表。さらに「我々は今回契約した選手たちにワクワクしている。彼らが今後成長し、チームに貢献していくのを見るのが楽しみだ」と述べた。

ドラフト1巡目指名と契約せず、翌年の補償指名権を得るのは決して珍しいケースではなく、たとえば2014年に全体1位指名のブレイディ・エイケンと契約しなかったアストロズは、2015年の全体2位指名でアレックス・ブレグマンの獲得に成功している。同様に、2012年1巡目指名のマーク・アッペルと契約しなかったパイレーツは、2013年の補償指名権でオースティン・メドウズ(現レイズ)を獲得。2011年1巡目指名のタイラー・ビーディと契約しなかったブルージェイズは、2012年の補償指名権でマーカス・ストローマン(現メッツ)を獲得した。メッツはリスクを抱えるロッカーと契約するよりも、来年のドラフト全体11位で有望な選手を指名するほうが得策と判断したというわけだ。

ロッカーは来年のドラフトに参加する資格がある。アドバイザーを務めるスコット・ボラスは声明のなかで「複数の著名な野球整形外科医による独立した医療審査によると、クマーは健康だ。2018年と2021年に撮影したMRIのあいだに大きな違いは見られない」と主張。「クマーは医学的な治療を必要としない。プロとしてのキャリアを始める準備をしながら通常通りにピッチングを続けていく」とロッカーの健康状態に問題がないことを強調した。

なお、ロッカーはドラフト上位投手の医療情報を共有するメジャーリーグ機構主催のプログラムに参加していれば、契約回避という今回の事態を回避できた可能性があった。もしロッカーがこのプログラムに参加していれば、メッツは全体10位指名に割り当てられているスロットバリュー474万ドルの40%以上の契約金をオファーする必要があったからだ。とはいえ、ロッカーがこのプログラムに参加し、事前に腕の問題が判明していれば、指名順位が下がったり、そもそも指名されなかった可能性もある。

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