社説(8/2):新手のヤミ金融横行/新たな被害者 出さぬ対策を

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 新手のヤミ金融業者が暗躍している。外形的には債権や商品の買い取りといった経済取引に見せ掛け、実質は超高金利で現金を貸し付ける。ヤミ金は資金需要の高まりを背景に勢力を伸ばす傾向があり、警戒が必要だ。
 新型コロナウイルスの感染拡大とともに広がり始めたのが、「給与ファクタリング」と呼ばれる取引。個人が勤務先に対して有する給与(賃金債権)を業者が買い取り、高額な手数料を差し引いて金銭を交付する。業者は個人が給与を手にした段階で、資金を回収する。
 ヤミ金の多くは「債権を売買しているだけ」「金利ではなく手数料」と反論し、金銭の貸借には当たらないと主張する。貸金業法や出資法に抵触しないよう、自分の都合のいいように解釈しているにすぎない。
 裁判所は民事訴訟で、「こうしたやりとりは貸金業に当たる」との判断を相次いで示している。東京地裁は今年2月、無登録で年利換算250%超の金利を受け取ったとして、業者に全額返還を命じる判決を言い渡した。
 警察も貸金業法(無登録営業)や出資法(超高金利)などを適用し、悪質な業者の取り締まりを進めている。
 この種の業態が摘発対象と見るや、「後払い現金化」「ツケ払いサービス」などとうたい、商品売買を装って超高金利で資金を提供する業者が急増し始めた。
 消費者に価値のない商品を購入させ、提携する買い取り業者が商品と交換で金銭を融通する。後日、消費者が給料日などに商品代金を支払う。キャッシュバックや商品レビューの報酬名目で現金を貸し出す例もある。
 問題はまず、高額な支払いによって生活環境が悪化し、多重債務に陥る危険性があることだ。取引の際に提供した個人情報が悪用されるといったトラブル、犯罪被害に巻き込まれる事態にも用心しなければならない。
 金融庁や消費者庁、警察庁などは文書で、巧妙な手口、個人情報の取り扱いに注意するよう呼び掛けている。
 国内では2000年代半ばにかけて、ヤミ金ばかりか大手の消費者金融会社でも「高金利」「過剰融資」「過酷な取り立て」が横行した。自社の従業員に資金貸し付けと回収のノルマを課し、それを達成しようと違法・不当な行為が常態化するに至った。
 利息制限法(15~20%)と出資法(29.2%)の上限金利差を指すグレーゾーン金利(10年6月に撤廃)も社会問題となり、全国の支援団体や弁護士会が多重債務に陥った被害者の救済に奔走したことは記憶に新しい。
 ヤミ金は景気の後退期、手を替え品を替え、困窮する消費者の心理につけ込んでいく。返済と取り立てに苦しむ被害者を再び出すようなことがあってはならない。