バッハ氏の言葉

 〈中高年男性が頭に浮かんだ駄じゃれをためらいなく口に出してしまう理由〉を脳科学的に説明すると「側頭連合野の暴走を前頭葉が抑えきれないから」という理屈になるらしい。解説役は脳科学者の茂木健一郎さんだった。3年ぐらい前にNHKの人気番組で教わったのをよく覚えている▲「おやじギャグ」とは違うが、この人の不用意な発言の数々もそうした脳の仕組みの産物なのか-と「チコちゃん」のレクチャーを思い起こしている。国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長▲大会の前に「五輪を開催するために“犠牲”を払わねばならない」と述べて物議を醸し、菅義偉首相との会談では五輪の無観客開催について「新型コロナの状況が好転したら有観客で」と要望した▲前者は翻訳が言葉足らずだった可能性も指摘されたが、後の方は単純にあきれた。急な方針転換で生じる混乱には思いが及ばないのか、と▲折り返しを過ぎた五輪。「日本国民は五輪を受け入れている」と語った。日本選手が活躍している、世論も軟化しているはず、始まってみればこんなもの-と言わんばかりだ。証拠は、と問いたくなる。メダルラッシュが全て解決するほど世論は単純ではない▲発言の前に熟慮を-と改めて勧めたい。ただ、たぶん直らない。(智)

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