熟練のシェフが腕を振るうホテルの料理と、3分で手軽に食べられる日清食品のカップヌードル。料理として180度異なるように思える二つを組み合わせる試みを東京・西新宿の京王プラザホテルが行っている。水と油のような両者が融合し、料理として完成された領域に達している。(共同通信=中村彰)
京王プラザホテルが開業して今年で50年。ホテルと同じ東京都新宿区に東京本社を置く日清食品がカップヌードルの発売を始めてからも50年。こんな縁からコラボ企画が生まれた。
話を持ち掛けられた厨房(ちゅうぼう)側は面食らったが、若手スタッフが積極的にアイデアを出し、ベテランが持つ技術を駆使してホテル料理にふさわしい品々が仕上がった。
「スーパーブッフェ グラスコート」は料理6品とデザート2品を提供している。「カップヌードルサラダ パクチー風味」は、お湯を掛けて2分たった麺を急速冷蔵。スープと玉ネギ、ショウガ、酢をミキサーにかけたドレッシングを麺に掛けパクチーをあしらった。ベトナム料理からの発想。「謎肉」が隠れているのが楽しい。
「冷しゃぶ カップヌードル旨辛豚骨とねぎのソース」は同様に調理した麺にボイルした黒豚とネギを自家製香味ソースで合わせ、糸唐辛子とミョウガをあしらった。辛さを加えるのにトウバンジャンも検討したが、カップヌードルの完成された味とのバランスを考え糸唐辛子にした。
バーガーなのにパリッとした麺の食感を楽しめるのが「チリトマトヌードルのハンバーガー仕立て」。パン生地に砕いた麺を練り込んでバンズを焼き上げ、ハンバーグにとろみを付けたスープを絡めた。素揚げした麺をトッピングしている。どこにもトマトがないのに、ほのかにトマトの香りが。
このほか、ホテルの手を掛けたカレーとカップ麺のカレーが融合した「欧風チーズカレー&京王プラザホテル伝統のカレー」や、麺と卵、エビのコンビネーション「カップヌードルしおのサンドイッチ」、砕いた麺とホワイトソースで仕上げズワイガニをあしらった「カップヌードルシーフードのグラタン レモン風味」が控えている。
デザートは2品。「カップヌードルカレーと謎肉の焼き菓子」には驚かされた。砕いた麺と「謎肉」、アーモンドの香り高い生地を合わせて焼き上げた。どう考えても洋菓子なのだが、カレーが香り「謎肉」の歯応えがしっかりと感じ取れる。
デザートなのにみそ味なのが「カップヌードル味噌を使ったチョコレートムース」だ。粉末にした麺を振りかけた生クリームの上にしっとりとしたムース。砕いた麺にチョコレートを掛けたトッピングがパリパリで対比が面白い。
「カップヌードルの味はしっかりとしていて完成されたものなので難しかったが、古典的技法に落とし込むことで形にすることができた」と「グラスコート」の黒田一行シェフは振り返る。計8品を提供するが「その3倍は試行錯誤を重ねた」という。
ローストビーフをはじめとする通常メニューも楽しめるビュッフェスタイルで、ランチ5800円、ディナー7800円。
「オールデイダイニング 樹林」はコースメニューを用意している。3種のサラダと「欧風チーズカレーのポットパイスープ」「シーフードヌードルを詰めたスモークサーモンと白身魚のファルス スープ仕立て」だ。
「ポットパイスープ」は「カップヌードル欧風チーズカレー」を1パック丸ごと使用。ホテルオリジナルのカレーと3種のチーズ、ニンジン、玉ネギ、ジャガイモなどカレーでは定番の野菜とカレーヌードルをポットに閉じ込めた。
上部のパイ皮を割り落とすと、立ち上るカレーの香りが食欲中枢を刺激する。中からはたっぷりの麺。水ではなく、ゼラチンで固めたチキンブイヨンを使っているので、コシのある麺を楽しむことができた。
魚料理は白身魚の練り物で麺を包み、さらにスモークサーモンで巻いてから蒸したものにスープを加えた。ムール貝やアサリ、スナップエンドウなどがあしらってあるが、スープの中にカニかまぼこやイカといったシーフードヌードルの具材が浮かんでいるのが何だか楽しい。
「樹林」のコースはランチ、ディナーとも4500円。
このほか、「中国料理 南園」「和食 かがり」でもコラボメニューを用意している。「京王プラザホテル×カップヌードル 50周年記念コラボ」は8月31日まで。