三井康浩氏が解説、侍が2点返した段階でも「まだ流れは米国にあった」
■日本 7ー6 米国(2日・ノックアウトステージ・横浜)
東京五輪の野球日本代表「侍ジャパン」は2日、横浜スタジアムで行われた準々決勝・米国戦で7-6のサヨナラ勝ちを収めた。同点の10回1死二、三塁で途中出場の甲斐拓也捕手(ソフトバンク)が右越えの決勝打を放った。延長タイブレークの激闘の末に掴んだ勝利に、2009年WBCで日本代表チーフスコアラーを務めて世界一に貢献した野球評論家・三井康浩氏は勝因に6回、7回を無失点に封じた千賀滉大投手(ソフトバンク)の投球を挙げた。
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最大の勝利のポイントを挙げるとすれば、私は4番手として6回から登板し、2イニングを1安打5奪三振無失点に抑えた千賀滉大投手(ソフトバンク)のピッチングだと思います。米国は同点の5回に3番手の青柳晃洋投手を攻めて一気に3点を奪いました。その裏、侍ジャパンが2点を返したものの、この時はまだ流れは米国にありました。
4月に左足首靭帯損傷の大怪我を負ったことで本来の調子からはほど遠かった千賀。この日も、千賀にしては制球はいまひとつでした。ただ、米国の打者の大半は“お化けフォーク”の異名を取る、あれほど落差の大きいフォーク、そしてキレのあるカットボールに面食らったのでしょう。
低めの変化球を意識すれば、今度は高めのストレートに振り遅れるという悪循環。5回は3者三振。6回も2死一、二塁としたものの、それまで3打数3安打だったコロスバリーがフォークを振らされて三振に倒れました。千賀がそれまで押せ押せだった米国の勢いを完全に断ち切ってくれました。
「タイブレークになると豊富な投手力と小技の精度が生きる」
千賀が2イニングを抑えたお陰で、延長10回まで守護神の栗林良吏投手(広島)を取っておくこともできました。無死一、二塁という絶体絶命の状況から始まるタイブレークで、無失点で帰ってくることができたのは、栗林だからできた芸当です。球種は概ねストレートとフォークだけですが、いずれも一級品のため、米国の打者は狙いを絞ることができませんでした。
タイブレークとなると、侍ジャパンは豊富な投手力とともに、小技の精度が生きます。米国が5番のフレージャーから始まったこともあって、無死一、二塁のチャンスから強攻を繰り返すしかなかったのとは対照的に、侍ジャパンは先頭の代打・栗原陵矢捕手(ソフトバンク)が今大会初打席にも関わらず、初球でバントを確実に決めて甲斐のサヨナラ打に繋げました。
米国は延長10回に1死二、三塁とされると、中堅手のロペスを内野に回す“内野5人シフト”を敷いて一か八かの賭けに出ましたが、小さな事を着実に積み上げた日本に勝利の女神が微笑む結果となりました。まさに“スモール・ベースボール”の勝利だったと思います。苦しみながらも大きな勝利を掴んだことで、金メダルが見えてきたといえるのではないでしょうか。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)