「旅行中止」に落胆の声 日光や那須の宿泊施設、逆風続く

宿泊施設で消毒作業を念入りに行う従業員

 【那須・日光】新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、全国知事会が夏休み中の都道府県境をまたぐ旅行などの原則中止・延期を呼び掛けたことを受け、那須町と日光市の宿泊施設では2日、「やむを得ない」と理解を示す一方、「経営的に厳しくなる」と落胆の声が上がった。関係者はこれまで以上に感染対策へ神経をとがらせている。

 「知事会の訴えは仕方がない。今は集客が難しい」。那須町湯本の旅館「山快」の阿久津千陽(あくつちあき)社長(50)は苦しい胸の内を明かした。2日には予約キャンセルが数件出た。長引くコロナ禍からのさらなる追い打ち。「経営的に厳しいが、これまでの感染対策を続けるしかない」と語る。

 首都圏からの客が9割に上る同所の旅館「山水閣」では、感染者数が全国的に急増した数日前から予約キャンセルや問い合わせが相次いでいるという。片岡孝夫(かたおかたかお)社長(48)は「町の観光業全体の年間売り上げの3割は夏場。書き入れ時に客が来ないと大きな打撃」と表情を曇らせた。

 同様に首都圏の客が8割という日光市鬼怒川温泉大原の「鬼怒川グランドホテル夢の季(とき)」の波木恵美(なみきえみ)社長も「『旅行しない』という状況がこのまま長引けば経営がより厳しくなる」と不安をのぞかせる。

 7月下旬以降の予約キャンセルなどもあり、今月の予約は平年の2割弱に落ち込んでいる。2日には全従業員に対して感染対策の徹底を改めて呼び掛けた。

 「感染対策をしっかりしていたり、ワクチンを接種したりしたお客さまにぜひ来ていただきたい」と波木社長。国などに対して、「ワクチン接種やPCR検査を受けた人に証明書を出して移動しやすくするなど、細やかな対策を講じてほしい」と求めた。

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