開けるも閉めるも閉塞感 時短営業要請、宇都宮の飲食店は

県による時短要請を受けて、午後8時を前に閉店作業に入る飲食店の店主=2日午後7時55分、宇都宮市江野町

 新型コロナウイルスの感染急拡大に伴い、栃木県内7市の飲食店に対する県の営業時間短縮要請の期間が2日、始まった。宇都宮市の中心部では、苦渋の思いで午後8時に店を閉める店主がいる一方、通常営業を続ける店もあった。繰り返される時短営業。ともに閉塞(へいそく)感だけが色濃くなっていく。

 午後8時、宇都宮市中心部のオリオン通り。次々と飲食店のシャッターが下りる音が寂しく響いた。

 「大衆酒場モツレ」は午後7時55分に最後の客を見送った。通常午前0時までの営業だが、県の要請に従い店を閉めた。本来なら忙しさがピークの時間。店先に出していた看板やテーブル、イスをしまう作業をスタッフが黙々と進めた。

 斎藤和宏(さいとうかずひろ)店長(40)は「お客さんが徐々に戻ってきていた。感染が拡大し致し方ないが、厳しい」と明かす。「今日は思ったよりお客さんが来た。でもそれも良いのか悪いのか…」

 来店した宇都宮市中央3丁目、飲食店勤務池田将明(いけだまさあき)さん(31)自身も勤務先が休業に。「またか、という気持ち。でもしょうがない」と生ビールを飲み干し、早々に店を後にした。

 同市江野町の「炭火串焼(くしやき)とり芳」。なじみ客の同市花房3丁目、自営業高瀬昌明(たかせまさあき)さん(53)が用事ついでに「1杯だけ飲んでいこうかな」と店主の熊田恵樹(くまだけいじ)さん(45)に声を掛けた。午後7時10分。熊田さんは「今日からお酒は7時までなんですよ」と頭を下げた。

 感染の波ごとに行政の要請には全て従ってきた。飲酒時の感染リスクの増加などを考えると「正しい方向性だと思う。飲食店は協力金が出るだけありがたい」

 「人生を懸けて」店を出し3年目。「コロナを巡る正解が、みんな分からなくなっているのでは。でも、耐えるしかない」

 宇都宮市内で飲食店を経営する男性は、午後8時以降も営業を続けることを迷わず決めた。「これまで時短営業の要請をさんざんやって感染拡大を止められていない。(時短営業の)意味はあるのか」。行政の対応への不信感が我慢を越えた。営業を続ける理由は「第一にお客さんが求めているから」と断言する。

県による時短要請を受けて、午後8時を前に閉店作業に入る飲食店の店主=2日午後7時55分、宇都宮市江野町

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