侍ジャパンには「運もあった」 元コーチが感じたタイブレークでの“打順の巡り”

米国にサヨナラ勝ちした侍ジャパン【写真:Getty Images】

5番・フレイジャーから始まった米国、8番・村上からだった侍ジャパン

■日本 7ー6 米国(2日・ノックアウトステージ・横浜)

2日に行われた東京五輪野球競技の準々決勝で米国に劇的なサヨナラ勝ちを収め、韓国との準決勝へ駒を進めた野球日本代表「侍ジャパン」。ヤクルトなどで活躍し、ヤクルト、ソフトバンクでコーチも務めた野球評論家の飯田哲也氏は、侍ジャパンには延長タイブレークである“幸運”があったと指摘した。

1点ビハインドの9回に同点に追いついた侍ジャパン。無死一、二塁で始まる延長タイブレークで栗林良吏投手(広島)が無失点に封じて、サヨナラへの道筋をつけると、その裏に代打・栗原陵矢捕手(ソフトバンク)が初球できっちり送りバントを成功させた。1死二、三塁となり、甲斐拓也捕手(ソフトバンク)が右翼フェンス直撃の適時打。米国が敷いた内野5人シフトを破って、劇的なサヨナラ勝ちを決めた。

この延長タイブレーク、飯田氏は「侍ジャパンには本当に運があったと思います」という。そう感じたのは、両チームの打順の巡り合わせにあった。

米国は5番のトッド・フレイジャー内野手から延長10回の攻撃がスタート。かたや、侍ジャパンは8番の村上宗隆内野手(ヤクルト)が先頭だった。クリーンアップの5番から始まる米国と下位打線の日本では、米国にメリットがあるかと思いきや、飯田氏の見立ては真逆だった。

3、4番が走者だったために「米国は強攻するしかなかった」

「5番からということで米国は強攻するしかなかった」と飯田氏。タイブレークが5番からの攻撃となったことで、3番のオースティンが二塁走者、4番のカサスが一塁走者に。バントを考えづらい5番打者、かつ走力があまり期待できない中軸の打者が走者という形となり、米国側はとにかく強攻策で点を取るしかなかった。

かたや、栗林が無失点に封じた侍ジャパンは、1点取れば良い状況で攻撃を迎えた。8番の村上からの打順で二塁走者が6番の柳田悠岐外野手(ソフトバンク)、一塁走者が7番の菊池涼介(広島)に。走者の走力に不安はなく、ベンチは迷うことなくピンチバンターとして栗原を送ることができた。この打順の巡りも、結果的に侍ジャパンに繋がる要素となった。

また、飯田氏は「結果的に10回に栗林が投げられたっていうのが大きかったですね」とも。9回まで栗林、平良海馬投手(西武)の勝利の方程式を使わず、中盤から千賀滉大投手(ソフトバンク)、山崎康晃投手(DeNA)、大野雄大投手(中日)のリレーで9回まで無失点に凌いだリレーに注目し「勝ちパターンの投手を注ぎ込みたいところで我慢できる稲葉監督の強さっていうのを感じましたね」とこの継投策を決断した稲葉監督ら首脳陣の決断に賛辞を送っていた。(Full-Count編集部)

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