堂安律が53年ぶりメダルに導く! 強烈な覚悟を裏付ける “大会前の直訴”

スペインを相手に互角の攻防を見せた堂安(左)

日本サッカー界の悲願へ向けて、まだ戦いは終わっていない。森保ジャパンが準決勝のスペイン戦(3日、埼玉)で延長戦の末に0―1と敗れ、金メダルを逃した。それでも53年ぶりのメダル獲得へ、メキシコとの3位決定戦(6日、埼玉)が残っている。大一番でカギを握るのが10番を背負うMF堂安律(23=PSVアイントホーフェン)の強烈なリーダーシップだ。

まさに歴史に残る死闘だった。日本はスペインに主導権を握られながらも主将のDF吉田麻也(サンプドリア)を中心に守備陣が奮闘し、GK谷晃生(湘南)も好セーブを連発してピンチをしのいでいく。

0―0のまま延長に突入すると、森保一監督はMF久保建英(レアル・マドリード)と堂安のダブルエースを下げる執念の采配で勝利をつかみにいく。しかし、試合終了間際の延長後半10分、FWマルコ・アセンシオ(レアル・マドリード)に強烈なシュートを決められて力尽きた。

地元開催でチーム全員が口をそろえて目標に掲げてきた金メダル獲得の野望はついえた。しかし、森保ジャパンの挑戦はまだ終わっていない。森保監督は「オリンピアンであるかメダリストであるか、大きな違いがある」と最後の戦いへ向けて猛ゲキ。吉田も「ここからはメダルを取りたいと思う気持ちが強いほうが勝つ。最後はメダリストになりたい」と言葉を振り絞った。

1968年メキシコ五輪以来53年ぶりの銅メダル獲得がかかる大一番へ向けて、キーマンになるのが堂安だ。今大会は栄光の10番を背負って奮闘しているが、地元開催の夢舞台にかける思いは誰よりも強く、大会前には主将就任も〝直訴〟していたという。

堂安の個人トレーナーを務める元陸上日本代表の杉本龍勇法政大教授(50)は「律は主将をやりたくて、吉田に『麻也さん、僕本当に主将をやりたかったんですよ』と話していた。麻也は『おれは誰でもいいと(森保監督に)言ったけど、森保さんにしてみたら(A代表と同様に)そのまま主将をやってくれという話になるだろ』と話していた」と堂安と吉田の間で交わされた会話を明かす。堂安が背番号10とともに主将の大役も熱望していたのだ。

堂安の異例の訴えの真意について杉本氏は「律にしたら自分中心といううぬぼれではなくて、雰囲気的にも自分が引っ張っていかないといけないという強い自覚があったと感じている」と説明。チームのリーダーとして東京五輪を戦い抜く覚悟からの行動だったのだ。

3位決定戦に向けては体力はもちろん、精神面の立て直しも求められる。そこで堂安の強い気持ちが失意のチームをよみがえらせるはず。日本の10番に最後の大仕事が待っている。

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