今大会初採用となったスポーツクライミング。初代金メダリストを狙う楢崎智亜(ならさきともあ)は20人中2位で決勝進出。午後11時近くまでかかった予選に疲れも見せず「いつも通りに登れた」とコンディションの良さを感じさせた。
3種目の複合で行う今大会は、高さ15メートル、セッティングが世界共通の壁を登り速さを競うスピード、4メートルの壁にセッティングされた課題(コース)を登れた数を競うボルダリング、6分間に約15メートルの壁の登れた高さを競うリードの総合成績で争う。
真夏の屋外の競技場は午後5時の競技開始でも32度、湿度約80%と蒸し暑い。選手の額や露出した肩に汗がにじむ。
楢崎がかつて苦手としたスピードは自身が持つ日本記録が5秒72と、海外の専門選手にも引けを取らない。この日は1回目で5秒94をマークして2位につけると、2回目はパスしてその後の種目に温存した。
四つの課題に挑んだ得意のボルダリングは、最終的に完登者が楢崎らわずか2人。最難関だった第2課題で沸かせた。ホールド(突起物)が四方に離れ、押さえ込むパワーとバランスが必要な難題をクリア。課題途中のボーナスに当たる「ゾーン」は4課題全てで獲得し、2完登の2位として総合成績でも2位につけた。登る前に予選突破が決まっていたリードはミスもあり14位だった。
コロナ禍で海外での経験が多くは積めないまま、待ち望んだ地元での五輪。公式練習で「今季1番いいかな」と好調をアピールしていた通り、軽やかな動きを披露した。5日の決勝はスピードがトーナメントとなり、ボルダリング、リードの成績はリセットされる。「積み重ねてきた全てを出し切る」と表情にも自信がみなぎる。25歳の世界王者が、新たなタイトルへの勝負に挑む。