2022年法令改正でiDeCoはどう変わる?ポイントを解説、より使いやすい制度に

「国民年金や厚生年金はだけでは老後の生活費は足りない!」「老後のお金を増やしたい!」という方が自分自身で自分の年金を用意する制度にiDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)があります。2022年、このiDeCoの制度が一部改正され、より使いやすい制度になる予定です。そこで今回は、iDeCoの主な改正点と、改正によってどう使いやすくなるのかを解説します。


老後資金を用意するために役立つiDeCo

iDeCoは、国民年金や厚生年金といった公的年金に上乗せできる私的年金制度のひとつです。毎月自分で一定の掛金を支払って定期預金・保険・投資信託で運用し、積み立てた資産を60歳以降に受け取ります。運用がうまくいけば、受け取れるお金も増えますが、減ってしまう場合もあります。しかし、それでも他の資産運用のしくみには見られない税制優遇を受けられるため、お金をじっくり堅実に増やすのに向いています。

iDeCoでは、掛金の積立時・運用時・受取時に税制優遇が受けられます。

積立時には、掛金が全額所得控除になるため、所得税や住民税の負担を減らせます。運用時には、利益にかかる税金(通常20.315%)が非課税になります。

そして受け取り時には、一時金で受け取るなら「退職所得控除」、年金で受け取るなら「公的年金等控除」が使えるため、税金の負担が軽くできます。つまり、税金を減らしながら、自分年金を作ることができるのです。

なお、この個人型確定拠出年金の制度自体は2001年からありました。しかし、2017年から「iDeCo」という愛称で呼ばれるように。加えて、それまでiDeCoを利用できなかった一部の会社員や公務員、専業主婦(夫)などもiDeCoを利用できるようになりました。これにより、現役世代ならほぼ誰でもiDeCoを利用できるようになっています。事実、iDeCoの口座開設数も200万口座を突破(2021年5月時点)。多くの方が利用しています。

そんなiDeCoの制度が、2022年に一部変更されます。主な変更点を3つ、変更の時期の順に解説します。

変更点1:老齢給付金の受給開始年齢が75歳までに延長(2022年4月〜)

iDeCoで用意した資産(老齢給付金)を受け取る時期は、現状60歳から70歳までの間で、自分で選ぶしくみです。受け取るまでの間は、非課税で運用を続けられます。

2022年4月からは、老齢給付金を受け取る時期が60歳から75歳までに、5年間延長されます。これは、公的年金の繰下げ受給が75歳までできるようになるのに合わせての変更です。

受給開始年齢が5年延長されることで、非課税で運用を続けられる期間も5年間延長されます。将来の市場の値動きのことはわかりませんが、たとえば70歳でそろそろ老齢給付金を受け取ろうというときに市場が暴落し、iDeCoの資産価値が下がってしまったら残念ですよね。しかし、そんなときに75歳まで非課税で運用できるならば、「もう少し待ってみよう」という選択もできるわけです。また、5年間運用期間を延長できることにより、より資産を増やせる可能性が高まります。

ただし、公的年金の繰下げ受給では、1ヵ月繰り下げるごとに0.7%ずつ年金が増えていきますが、iDeCoの受け取りを遅らせて非課税で運用しても、増えるかどうかは市場次第。また、iDeCoで運用を続けている間は、口座管理手数料がかかり続ける点にも注意が必要です。

変更点2:iDeCoの加入可能年齢が5年延長(2022年5月〜)

現状、iDeCoに加入して掛金を出すことができるのは、60歳未満の方です。60歳以降は、上記で触れたとおり、これまでの資産を非課税で運用することはできるのですが、新たに掛金を出すことはできません。

2022年5月からは、加入可能年齢が「65歳未満」に、5年間延長されます。これによって、単純に長期・積立・分散投資を5年間長く続けられますし、掛金の所得控除によって税金も安くできるのはメリット。堅実な資産形成の役に立ちます。

現在50代などで、「iDeCoを始めてもどうせ数年しか使えないから」などと、iDeCoの利用に消極的だった方も、運用期間が伸ばせるので資産形成しやすくなるでしょう。

ただし、iDeCoに加入するには「国民年金の被保険者(加入者)」であることが条件です。60歳以降も働く会社員・公務員で、厚生年金に加入している場合は、同時に国民年金にも加入しているので、問題なく65歳までiDeCoに加入できます。

しかし、自営業やフリーランスなどの第1号被保険者や、専業主婦(夫)などの第3号被保険者は、60歳になると国民年金の被保険者ではなくなるため、iDeCoには加入できなくなります。なお、60歳以降も自分で国民年金保険料を支払い、国民年金の加入期間を増やす「任意加入制度」を利用している場合は、iDeCoに加入できます。

変更点3:企業型確定拠出年金の加入者がiDeCoに加入しやすくなる(2022年10月〜)

2017年に行われたiDeCoの改正では、それまでiDeCoを利用できなかった「企業型確定拠出年金(企業型DC)の利用者」もiDeCoに加入できるようになりました。企業型DCは企業年金のひとつで、勤め先の企業が従業員(加入者)に掛金を出して、運用は加入者自身が行うしくみ。運用した資産を老後に受け取れる点はiDeCoと同じです。

現状でも、制度上は企業型DCに加入している人がiDeCoにも加入することはできます。しかし、実際に同時に加入できる人はごくわずかでした。というのも、iDeCoも利用できるようにするには、労使間で合意した上で、同時に加入できるように規約を変更する必要があったからです。規約がないために、iDeCoを利用できない方がたくさんいたのです。

2022年10月からは、企業型DCのある会社に勤めていて、そうした規約がない場合でも、自分の判断でiDeCoに加入できるようになります。これによって、企業型DCとiDeCoを併用してより効率よく資産形成ができるようになります。また、企業型DCの金融機関は勤め先が決めるため自分では選べませんが、iDeCoの金融機関は自分で選べますので、投資したい商品がある場合にも便利です。もちろん、iDeCoの掛金は所得控除でき、所得税や住民税を安くするのにも役立ちます。

ただし、企業型DCとiDeCoを併用する場合、掛金の上限があります。

企業型DCとiDeCoに加入する場合、企業型DCの掛金の上限額は最大5万5,000円、そのうちiDeCoの掛金額は最大で2万円までとなりますが、2つの掛金の合計は5万5,000円までとなります。

企業型DCのほかに確定給付企業年金(DB)などにも加入している人がiDeCoに加入する場合、企業型DCの掛金の上限額は最大2万7,500円、そのうちiDeCoの掛金額は最大で1万2,000円までとなりますが、2つの掛金の合計は2万7,500円までとなります。

仮に企業型DCの掛金が上限額に達している場合は、iDeCoに加入することはできません。

また、企業型DCの手数料は会社負担ですが、iDeCoの手数料は自分で負担しなくてはならない点は押さえておきましょう。


2022年に控えるiDeCoの改正で、iDeCoはますます使いやすくなります。老後資金を用意するにあたって、iDeCoを利用する人としない人の差は、広がっていくと考えます。ですから、今のうちからiDeCoをスタートして、老後資金づくりにはげみましょう。

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