長崎県内12~15歳ワクチン接種 不安軽減へ 医師会、PTAが啓発

 12~15歳への新型コロナウイルスワクチン接種が6日から長崎県雲仙市で始まる。18歳以下に夏休み中の接種を検討している県内自治体はほかにもある。大人よりも心理面の負担軽減策が求められるとあって、医師会が正しい知識の普及に協力。PTAも接種の有無で差別やいじめが起きないよう啓発に乗り出した。
 7月30日夜、13の郡市医師会から感染症担当理事が長崎市茂里町の県医師会に集まった。主な議題は12~15歳に対する接種。終了後、取材に応じた森崎正幸県医師会長は、感染再拡大の傾向を踏まえ「ワクチンは唯一の武器。12~15歳の接種も推進する立場を確認した」と話した。その上で「接種の判断材料にしてもらえるように」と保護者はもちろん、12歳児も理解できるパンフレットの作成を急ぐ意向を明かした。
 ワクチン接種は、不安や緊張などで起こるトラブルもある。脳貧血状態になって失神や立ちくらみが起きる「血管迷走神経反射」や、明確な原因がないのに体に不調が出る「不定愁訴(しゅうそ)」などだ。
 この点で子どもは大人以上に配慮が求められ、専門家は接種の前、中、後にそれぞれケアが必要と訴える。接種のメリットと副反応を事前に知った上で、リラックスして受けられ、事後も気軽に相談できるのが理想。そのため、かかりつけ医による個別接種が推奨されている。
 自治体もこうした情報を把握し、対策を練る。長崎市は12~15歳の接種券の用意はできているが、発送は見合わせている。「不安感を取り除くために分かりやすく、丁寧な」案内文を添える方針で、市医師会と詳細を詰めている。
 東彼東彼杵町は7月末から接種対象を59歳以下に拡大。子どものいる家庭には事前に意向調査をした。担当者は「12~15歳を特に急いだわけではない。いろんなニーズに可能な限り応えるため」と話す。急ぐ家庭もあれば、じっくり考えたい親もいる。集団接種か個別接種か、保護者同伴か、などさまざまな意向を聞いたという。
 県PTA連合会は7月中旬、各郡市町PTA連合会に向け、小中学生の接種について「お願い」の文書を送り、ホームページにも掲載。接種が原因でいじめや差別が起きないよう、家庭での話し合いを呼び掛けている。山本道雄県PTA連合会長は「いろんな事情で接種できない人もいると、保護者が子どもにしっかり伝えてほしい」と話す。
 さらに山本会長は、同調圧力で半強制的に接種が進むことを警戒。自治体や医療機関に対し「保護者や子ども本人が判断できる環境や情報が必要。各家庭の事情に応えられる体制を整えて」と要望する。

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