<金口木舌>米軍が踏み荒らしたもの

 「活動するとさまざまな問題が発生する」。在日米軍のシュナイダー司令官(中将)が7月の会見で、事件・事故について述べた。「訓練や即応能力がなければ、日本のためにも米国のためにもならない。併せて地元に対する負担は最小化しなければいけない」と訓練の必要性を強調した

▼6月にうるま市の津堅島で米軍普天間飛行場所属のヘリが不時着した。7月には渡名喜島沖で鉄製コンテナを落下させた。さらに宮崎県の畑に不時着したヘリも普天間所属だ。「さまざまな問題」とひとくくりに語るのは人権感覚が欠如している

▼米軍は津堅島や宮崎県での不時着を「予防着陸」と発表した。だが事故の詳しい経緯や原因は説明しない。住宅などに墜落する危険はなかったのか。情報がなければ確かめようもない

▼基地周辺住民は普段から騒音にさらされ、事故があれば命の危険もある。被害はフェンスを越えてくるのに情報は遮断されている

▼権力が情報を独占すれば何が起こるか。大本営発表が戦果を強調する中、敗戦に突き進んだ歴史が教えてくれる。為政者が道を誤らないよう国民に知る権利が保障されている

▼津堅島に不時着したヘリが島を離れた後、現場を訪れた。畑に大きな足跡がいくつも残っていた。米軍は土とともに、県民が人間らしく生きるために大事なものを日々、踏み荒らしていないか。

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