「職人の手」で知る鎌倉彫の魅力 工芸館に通い、高校生が職人と交流、写真展も

「鎌倉彫や職人さんと触れ合っていると、すごく楽しくてわくわくする」と写真を前に目を輝かせた田邊さん=鎌倉市雪ノ下

 神奈川県立七里ガ浜高校(鎌倉市七里ガ浜東)3年の田邊真和(まな)さん(18)=横浜市戸塚区=が、古都・鎌倉で800年受け継がれる工芸品「鎌倉彫」の職人たちと交流し、その魅力を伝え始めた。伝統が息づく作品や「宝の源」と感じる職人の手を撮影して歩く田邊さんは「鎌倉彫を手に取り、魅力を感じてもらうきっかけをつくりたい」と奔走している。

 大きなボタンが刻まれた皿、梅や猫がかわいらしく彫られた鏡…。田邊さんが通う鎌倉彫工芸館(同市由比ガ浜3丁目)には、丹精込めた作品が並ぶ。

 鎌倉時代の仏師が仏具として作り始め、今に受け継がれる鎌倉彫。カツラの木などで木地を手掛け、陰影ある力強い彫刻と丁寧な漆塗りが特徴で、細かく丁寧な作業の連続という。

 祖母の影響で工芸品好きだった田邊さん。2年前に小町通りで見かけた鎌倉彫に興味を持った。歴史を調べてもっと詳しく知りたいと思いが強まり、工芸館に通うようになった。

 「何となく怖そうだった」という職人も歓迎してくれた。「若者の意見を聞きたい」と頼まれた時は20人ほどにアンケートをとり、鎌倉彫とパールのイヤリングのアイデアを提案。「必要とされるものを作り続けたい」と熱い思いを聞き、「仏師から受け継いだ技が歴史を乗り越えて残り、一つ一つに思いが込もっている」と愛着が深まった。

 同校の校医・酒井太郎さん(51)が地域活動に熱心と知って、この魅力をもっと伝えたいと相談した。実演イベントはコロナ禍で断念したものの、酒井さんのクリニック待合室で写真12枚を、「匠の手、技」と題し7日まで展示している。

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