レスリング女子50キロ級決勝(7日、幕張メッセ)で、須崎優衣(22=早大)は孫亜楠(中国)を1分36秒、テクニカルフォールで下し、金メダルを獲得した。
必殺のアンクルホールドがさく裂した。がぶりから2ポイントを奪うと、足首を固め、ぐるぐると相手を転がした。決勝とは思えない圧勝劇。終わってみれば、大会全4試合、すべてで6分かからずテクニカルフォール、0失点勝ち。強すぎだ。
「今の自分があるのは自分が関わってくれたすべての人のおかげ。感謝の気持ちでいっぱいです。夢みたい」と涙を流した。
海外勢にはジュニア時代から無敗街道を突き進む。しかし、東京五輪予選を兼ねる世界選手権国内予選で強豪の入江ゆきに敗戦。五輪出場は絶望的となった。須崎自身も、自分の可能性は0・01%程度しかないと思う苦境。しかし当時の早大監督で日本男子フリー強化コーチの太田拓弥氏は、須崎の姿勢が幸運を引き寄せたと感じている。
「敗戦後、練習に現れたのは普段の優衣。ふて腐れたり、落ち込んだ様子は一切見せなかった。もし、入江さんが代表権を取って道が完全に途絶えたとしても、その姿勢は変わらなかったと思う。神様も見ていて、見捨てなかったんだと思う」。どんなにつらくとも競技に真摯に打ち込み、舞い込んだ運を逃さず夢舞台に立った。
今大会は日本選手団の旗手を務めた。重圧がかかるが、打診が来ると、悩む様子もなく快諾。
「目をキラキラ輝かせていた。モチベーションにかえていましたね」(吉村祥子コーチ)
22歳の若さで、3年後にはすぐパリ五輪がやってくる。伸び盛りの女王の時代が到来だ。