悲願の金メダルという最高の形で、東京五輪を終えた侍ジャパン。この勝利で日本野球が世界から改めて評価されるはずだが、今大会の代表の中で最も評価を上げた選手は誰か。一人挙げるとすれば、決勝の米国戦を含めて登板3試合すべてで無失点の好投を見せた伊藤大海投手(23=日本ハム)だ。
当初は侍ジャパンに選出される予定ではなかったが、先月3日に菅野(巨人)がコンディション不良で代表入りを辞退。この緊急事態で伊藤に白羽の矢が立ち、日本代表に緊急招集された。
そんな幸運から始まった今大会では、7月31日のメキシコ戦で2回1安打無失点(2三振)の好救援を見せると、4日の準決勝(対韓国戦)でも2回1安打(3三振)で宿敵を零封。試合途中に相手ベンチから「ロジンのつけ過ぎ」を指摘されても、ひるむどころか逆に敵前でたっぷりのロジンをつけながら投球する〝肝っ玉ぶり〟を見せた。
「(これからも)あまり気にせずやっていこうかなと思います」とは韓国戦後の伊藤。この度胸で首脳陣の信頼を勝ち取り、決勝の米国戦でも1点リードの緊迫した7回からマウンドへ送り出され、今大会3度目の好救援を見せた。
所属する日本ハムは現在リーグ最下位に低迷。シーズン前半戦は伊藤が先発としてチームトップの7勝で奮闘する苦しい状況だった。だが、今大会の大活躍で今後は自軍に勢いを呼ぶ可能性もある。
日本の金メダル獲得に大きく貢献した幸運の新人右腕は今大会を振り返り「うれしいの一言です。まだ半年しかプロ野球の世界でやってない中で、誰もができる経験ではないっていうのをさせてもらった。これをまたチームに持ち帰って、還元するのも役割だと思いますし、まだまだ自分自身も成長できるようにやっていきたい。本当にうれしい金メダルです」と笑み。シーズン後半戦での躍動にも注目が集まる。