マクラーレンF1チーム代表アンドレアス・ザイドルは、F1の世界に登場してまだ日が浅いものの、その成熟し規律あるアプローチによって、F1関係者からの尊敬を集めつつある。
第11戦ハンガリーGPで、レッドブル・レーシング代表クリスチャン・ホーナーとフェラーリ代表マッティア・ビノットは、今年導入されたバジェットキャップ規則について、見直しの必要があると主張した。インシデントに巻き込まれるなどしてマシンがダメージを受けた場合、多額の出費が必要になり、予算制限内に収めるのに非常に苦労させられるからだ。
イギリスGPでマックス・フェルスタッペン車はルイス・ハミルトンとのインシデントで大破した。ハンガリーではバルテリ・ボッタスのミスが発端となったアクシデントで、フェルスタッペンとセルジオ・ペレスの2台がダメージを受けた。ホーナーは、修理に多額の費用がかかることを嘆き、アクシデントの際の修理費は予算制限の対象外にすることを検討すべきだと主張した。
ハンガリーでは、ランス・ストロールにヒットされてシャルル・ルクレールがリタイアするというインシデントもあった。フェラーリは、後の検査でエンジンが今後使用不可能な見通しであることを明らかにした。ビノットは、修理費を予算制限の対象外にするのではなく、アクシデントの責任があるドライバーが所属するチームに負担させるべきだと発言した。
ハンガリーGPではマクラーレンのマシンもダメージを負った。ランド・ノリスがボッタスにヒットされ、マシンの損傷のためにリタイアしなければならなかったのだ。しかしザイドルのコメントは、ホーナーやビノットとは異なり、非常に冷静だった。
ホーナーの意見に賛成するかと聞かれたザイドルは「それは全くない。クリスチャンの望む方向には私は絶対に同調しない」とはっきり答えた。
「コストキャップについて、コース上でアクシデントがあるたびに、それによってどれだけ損害を被るかといったことを、逐一言及するようなことをするつもりはない。結局はこれは我々が参加しているゲームの一部だ。正しいやり方で予算を管理するのは我々自身の役目なのだ」
「スパに向けて最新仕様のパーツを十分用意するのは大変な仕事になるだろう。だが、ファクトリーで製造やエンジニアリング面を担当してくれている人々は非常に優秀なので、こういうことが起きたものの、挽回できると確信している」
「我々のプランに何か影響があるとは思っていない。特に複雑な状況ではない。シーズンに臨むにあたり、過去数年の経験をもとに、1年あたりのクラッシュによる損害額を見積もっておく必要がある。それを推定し、予算に組み込む。それが、我々が今取り組まなければならないことだ。誰もが同じ条件だ」
率直で的を射た発言をし、政治的な駆け引きをしないザイドルは、F1関係者から好感を持たれている。FOMで上級職についているある人物はブダペストでこう言った。「彼は見た目も発言も大人だね。それに比べると(レッドブルのヘルムート・)マルコやホーナー、(メルセデス代表のトト・)ウォルフはまるで12歳の子どもだ」