「私がですか?」西武レディース、監督イチ押しの“注目選手”がマネジャーなワケ

埼玉西武ライオンズ・レディースのマネジャーを務める田口舞奈さん【写真:川村虎大】

「西武ライオンズ・レディース」で、マネジャーを務める田口舞奈さん

2020年春に誕生した史上初のNPB公認女子野球チームの「埼玉西武ライオンズ・レディース」。7日に開幕した全日本女子硬式野球選手権大会に初出場し、マドンナ松山との初戦を11-0の4回コールド勝ちで飾った。日本代表で主将を務めた出口彩香内野手や、ワールドカップ3大会連続MVPの里綾実投手ら全国区のメンバーがいる中で、新谷博監督は“意外な名前”を注目選手に指名する。【川村虎大】

「私がですか?」。戸惑いながらはにかむのは、マネジャーを務める田口舞奈さん。指揮官からの指名に、驚いた様子を見せる。試合中、常に監督の隣に座り、飲み物の用意やスコアを記入しながら、選手への声掛けを怠らない。試合後は、応援してくれた関係者に挨拶回りをしながら、報道陣や集まったファンへの対応も。休む間もなく、常に動き回っている。

「他人のことを世話するのが好きなんですよね」

昨年のチーム発足以来、全日本クラブ選手権初優勝や栃木さくらカップ優勝など、全国規模の大会で結果を残してきた。ただ当初は、様々なチームから選手が集まり、練習は土日のみ。「前のチームではこうだった」と不満を口にする選手も。そんなチームをひとつにまとめたのが、田口さんだった。マネジャーとしての立場でも、間違ったことに対しては厳しく発言する一方、選手の相談に乗るなど監督と選手の“橋渡し役”を買って出た。

もちろん本業としての業務も欠かさない。ライオンズ・レディースはプロとは違うクラブチーム。運営の基盤となるスポンサー集めに奔走してきた。今では10社以上がチームを支えてくれている。“縁の下の力持ち”としての役割を務め、新谷監督も「よくやってくれている」と感謝する。

新谷監督の提案でマネジャーに「『残って欲しい』という言葉が嬉しかった」

新谷監督が現在も兼任で指揮を執る尚美学園大で選手だった田口さんは、2年生のころ都合で現役から身を引くことに。退部しようと考えていた時、マネジャーとしてチームを支えることを提案された。

「監督から『残って欲しい』って言われたのが、嬉しかったんですよね。それでマネジャーを始めました」。尚美学園大でマネジャーを2年務め、卒業後は一般企業に就職したが、ライオンズ・レディース発足と同時に退職。現在は、チームを運営している社団法人「埼玉レディースベースボール」に勤めながら、土日はマネジャー業務を行う。

「NPB公認球団」という肩書きに、重みや責任を感じる。「最初は言葉遣いなど一から監督さんに指導されました。西武と連絡を取るのも自分なので、そういった部分での厳しさはありました」。その分、やりがいも大きい。

「西武ライオンズのファンも応援に来てくれています。だから、比べられるのはライオンズなんですよ。男子のプロ野球選手を常に見ている人たちが、ライオンズ・レディースを見て残念な気持ちにならないように、そこでさらにファンを作れるようにする使命があると思います。だから、私もその名に恥じないマネジャーになりたいです」

監督イチ押しの“注目選手”が、NPB公認球団の成功に向けて陰でチームを支えていく。(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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