女子野球を牽引してきたW杯3大会連続MVP右腕 西武の背番号「18」を背負う“覚悟”

埼玉西武ライオンズ・レディースの里綾実【写真:川村虎大】

里は2番手で登板、2回をパーフェクトに抑え込む活躍でチームのコールド勝利を呼び込む

「負けるのが嫌いなんで」。そう言って笑う。「Lions」の文字を胸元に掲げた背番号「18」は、ワインドアップから伸びのある直球と急降下する縦のカーブを投げ込む。プロという肩書きがなくなっても、ワールドカップ3大会連続MVP・里綾実の投球は健在だ。

7日に愛媛・マドンナスタジアムで開幕した全日本女子硬式野球選手権大会。初戦は大会初出場の埼玉西武ライオンズ・レディースと、地元・松山市のマドンナ松山の一戦だった。試合は終始、ライオンズ・レディースがリードし、9-0の3回から登板したのは、里綾実投手。2回を打者6人で仕留め、11-0のコールド勝利を呼び込んだ。

「思い通りに近い形で投げられました。球に指が掛かっていたので、調整した部分が出せて自信になりました」

女子プロ野球チーム・愛知ディオーネなどに所属し、日本代表としてもワールドカップで3度のMVPを受賞するなど、女子野球を牽引してきた里。プロ選手を辞めてクラブチームに所属し、約1年半が経過したが、今の方が「覚悟はある」と話す。

「女子プロ野球に所属していたときも、ファンのためにという気持ちはあったのですが、今は練習は土日だけ。その中でやらなければいけないので、より自分に厳しくしなければいけないです。その一方で、『西武ライオンズ』という肩書きがある。その点では、覚悟というのは今の方が持ってやっている気がします」

女子の高校野球は甲子園で決勝戦「私たちの頃は目指すとかではなかったです。想像もつかなかった」

プロ時代と同じように注目されるが、その一方で、平日の練習は自分のみ。自らで調整しなければいけない難しさは感じているが、それでもやらなければいけない。その理由は、女子野球の発展を背負ってきだ自負があるからだ。

「野球ができる環境ではない中でずっと続けてきて今があると思うので、やってきたことが認められたいというのはある」と思いを口にする。ただ、ライオンズ・レディースを筆頭に、阪神タイガースWomenと、NPB公認の女子野球クラブチームが発足。さらには、今年の全国高校女子硬式野球選手権決勝が甲子園で開催することが決定するなど、確実に女子野球は発展してきた。

「甲子園……。私たちの頃は目指すとかではなかったです。想像もつかなかったので。だから、正直まだ実感湧いていないんですよね。そのうち凄いことだったんだな気づくんだと思います」。

だからこそ、その先頭に立っている身として立ち止まるわけにはいかない。史上初のNPB公認の女子野球チームだから、失敗はできない。「これでダメだったら、後が続かなかくなる。将来は私たちもプロが使うような球場を使って、お客さん満員にしたい」。その夢を叶えるためにも、まずは勝つ必要がある。「注目されている中で、全世代が集まるこの大会で日本一を取りたい。負けず嫌いなんで」。女子野球界を牽引する大投手の挑戦は、これからも続く。

【動画】フォームが松坂大輔にそっくり… W杯3大会連続MVP右腕・里綾実のカクッと落ちる縦カーブ

【動画】フォームが松坂大輔にそっくり… W杯3大会連続MVP右腕・里綾実のカクッと落ちる縦カーブ signature

(川村虎大 / Kodai Kawamura)

© 株式会社Creative2