新型ランドクルーザー300の狙い目は730万円の最上級版ではなく550万円のベーシックなグレードだ!

1951年、現在の自衛隊向けに開発した四輪駆動車に端を発するトヨタの「ランドクルーザー」(ランクル)にはいくつかのシリーズがある。中でも1967年に登場したステーションワゴン仕様のランドクルーザー55から発展したシリーズは、ランクル60、80、100、200とシリーズの最高峰モデルとして長い歴史を重ねてきた。そして2021年8月、14年ぶりのフルモデルチェンジを実施したのが「ランドクルーザー300」だ。四輪駆動車専門誌の編集長経験も持つカーライフジャーナリストの渡辺 陽一郎氏が、新しいランクルの最高峰モデルを解説。オススメグレードなどをご紹介する。

トヨタ 新型ランドクルーザー300[ZX(ガソリン車)(プレシャスホワイトパール)<オプション装着車>]

流行りのライトなSUVとは別格! 70年の歴史を持つ生粋の悪路向け四輪駆動車「ランドクルーザー」

トヨタ ランドクルーザーの源流となった「トヨタ ジープ」(BJ型)[1951年/1954年より「ランドクルーザー」名に変更]

今はSUVが世界的なブームになり、新型車の発売も活発だ。大半の車種は乗用車と共通のプラットフォームを使うシティ派だが、SUVの源流は悪路を走るためのツールだった。日本車ではランドクルーザーの前身とされるトヨタ ジープ(BJ型)が1951年に登場し、のちにランドクルーザーに改名されて今に至る。ラダー(ハシゴ状)フレームを備える、後輪駆動をベースにした生粋の悪路向けSUVだ。

70年に及ぶ歴史を持つランドクルーザーシリーズの最高峰「ランドクルーザー200」が2021年8月、14年ぶりにフルモデルチェンジを行い、「ランドクルーザー300」に刷新された。

新型ランクル300はフレームからエンジンに至るまで全てを一新

フレーム構造のTNGA GA-Fプラットフォーム

新型ランドクルーザー300(ランクル300)は、ラダーフレームとサスペンションを新開発。悪路走破力を維持しながら舗装路での走行安定性を向上させている。

メカニズムでは、耐久性の優れた油圧式パワーステアリングを踏襲しながら、電動機能も組み合わせて運転を支援する操舵機能などを加えた。雪道や砂地など、悪路の状況に応じてサスペンションやブレーキを最適に制御できるマルチテレインセレクトは、作動範囲を4WDのローレンジから新たにハイレンジまで広げた。

3.3リッター V6ツインターボディーゼルエンジン(F33A-FTV型), 3.5リッター V6ツインターボガソリンエンジン(V35A-FTS型)
3.3リッター V6ツインターボディーゼルエンジン(F33A-FTV型), 3.5リッター V6ツインターボガソリンエンジン(V35A-FTS型)

登載するエンジンは、従来型(ランドクルーザー200)にはV型8気筒4.6リッターガソリンが積まれていたが、新型では新開発のV型6気筒3.5リッターツインターボのガソリンと、V型6気筒3.3リッターツインターボのクリーンディーゼルになった。

装備については、衝突被害軽減ブレーキや全車速追従型クルーズコントロールを含んだトヨタセーフティセンス、ドライバーの死角に入る後方の並走車両などを検知して知らせるブラインドスポットモニターなどを標準装着した。安全面と運転支援の機能は大幅に充実している。

新型ランドクルーザー300で最もオススメなグレードは下から2番目! 550万円「AX」(ガソリン)だ

写真は「VX」グレード

新型ランドクルーザー300のグレードは、ガソリンが5種類、ディーゼルは上級に限定して2種類を設定した。

グレード名は下から「GX」(510万円)、「AX」(550万円)、「VX」(630万円)、「GR SPORT」(ガソリン:770万円/ディーゼル:800万円)、「ZX」(ガソリン:730万円/ディーゼル:760万円)となっている。

ガソリンモデルの乗車定員は、価格が最も安いGXを除くと3列シートの7人乗りで、ディーゼルは2列の5人乗りのみ。ガソリンエンジンに比べディーゼルは30万円高い設定だ。

写真は「AXグレード」

趣味性の強い車種だから、グレード選びは好みと予算に応じて行うことになるが、客観的に推奨度が高いのはガソリンのAX(550万円)だ。

2番目は、シートが本革になり、ドライバー異常時対応システム(ドライバーの異常を検知すると自動的に減速して停車させる機能)などの安全装備が充実しカラーヘッドアップディスプレイなども備わるガソリンのVX(630万円)となる。

新採用の指紋認証スタートスイッチは、GXはオプション(2万2000円と安い)だが、それ以上には標準装着される。

730万円(ガソリン)の最上級グレード「ZX」だけは他グレードに比べ割高感が強い

割高感ある「ZX」グレード(ガソリンモデル)

逆にZX(730万円/ガソリン)は割高だ。価格はVXに比べて100万円高いが、装備の違いを見ると、価格上昇は50万円程度が妥当になる。

トヨタは時々、高価格車の上級グレードを割高にする。最上級グレードを求めるユーザーが、機能や装備と価格のバランスを気にしない傾向にあることを知っていて、儲けを狙うわけだ。GRスポーツ(770万円/ガソリン)は専用のパーツを数多く装着するから一概にはいえないが、いずれにせよAXやVXに比べると割高になる。

なお新たに投入されたディーゼルエンジン車は、前述の通りZX(760万円)とGRスポーツ(800万円)のみの設定だから、必然的に割高になってしまう。

従ってランドクルーザーのグレード選びでは、550万円のAXが最も買い得だ。本革シートなどが欲しいユーザーはVXも検討したい。

AX・VXグレードにもディーゼルの設定を! またディーゼル車にも7人乗り仕様の設定が欲しい

写真は「ZX」ガソリン車(3列・7人乗り)

今後の展開としては、ディーゼルでもベーシックなAX・VXの2グレードを選択可能にすると良心的だ。そして、ディーゼル車には現状で設定がない7人乗り仕様にも需要があるだろう。これらは早期の追加を期待しておく。

また操舵を支援するレーントレーシングアシストとドライバー異常時対応システムは、VX以上のグレードだけに標準装着される。大切な安全装備だから、AXやGXでも選択可能にして欲しい。

ハイビーム作動時に相手方の眩惑を抑えるアダプティブハイビームシステムも、ZXとGRスポーツのみの設定だ。このタイプの装備は、今では軽SUVのダイハツ タフトなども採用するので、最高峰のトヨタ ランドクルーザーでは、全グレードに標準装着すべきだろう。

[筆者:渡辺 陽一郎/撮影:TOYOTA]

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