【横浜市長選告示】コロナ対策、IR誘致是非…8候補者が舌戦スタート

 8日に告示された横浜市長選は、激しい雨が降る中、22日の投開票に向けて14日間の選挙戦に入った。名乗りを上げたのは、いずれも無所属で元市議の太田正孝氏(75)、元長野県知事の田中康夫氏(65)、前国家公安委員長の小此木八郎氏(56)、水産仲卸業社長の坪倉良和氏(70)、元衆院議員の福田峰之氏(57)、元横浜市立大教授の山中竹春氏(48)、現職の林文子氏(75)、前神奈川県知事の松沢成文氏(63)の8人。届け出を終え、市内各地で第一声を張り上げた。

◆太田正孝氏(無・新) 「誠」の気持ちで市政に

 カジノができれば人生を誤る人が出る。勤勉を忘れ、国家もおかしくなる。絶対に阻止しなければならない。コロナ対策は封じ込めなければウイルスに打ち勝てない。早急に取り組む。

 市は借金に苦しんでいる。無駄を省いて出費を抑え、新しい事業に投資して産業を発展させ、新たな税収を見込んでいく。行財政改革に取り組む気持ちとして市長の給与を50%にする。

 小中学生は明日の横浜をつくる存在だ。市立中学校のデリバリー型給食を速やかにやめ、正規の学校給食を始めたい。小中学校給食を無償化したい。

 (これまで)一介の市議であり、大きな組織があるわけでないが、誠の気持ちを持って市政に臨む。

◆田中康夫氏(無・新) 人に尽くす部分に投資を

 12の取り組み「YOKOHAMA2021」を公約に掲げて立候補した。上瀬谷通信施設の跡地に医療、福祉、消防と救急の統合型のレスキュー施設(IR)をつくるべきだ。IRという名のカジノは地元の経済を潤さない。海外の巨大な資本に売り上げのほとんどをもっていかれる。

 福祉、医療、教育、環境、観光、さらには防災。これらは人が人の世話をして初めて成り立つ領域だ。この分野への傾注投資こそが地域の経済、人々に雇用と活力と希望をもたらす。信州・長野県で人が人に尽くす部分に投資を行うことで財政を変え、行政サービスを向上させた。横浜をより良く、そして日本をより良くする戦いを進めたい。

◆小此木八郎氏(無・新) 脱炭素社会のまちづくり

 市民の理解が得られていないIR(カジノを含む統合型リゾート施設)政策は横浜で採用しない。

 IRを取りやめて、そのあとはカーボンニュートラル、脱炭素社会を実現する。新しい産業と雇用を生むまちづくりに、横浜市として最初に手を挙げたい。IR後の横浜の姿を示し、それに賛同する事業家や専門家、市民らと会議体をつくりたい。

 歴史と文化を生かし、そして世界最先端を行く都市にする。お年寄りや障害者を支える上でAI(人工知能)やデジタルは便利で必要だが、機械だけに頼らず人々の心が通ったまちづくりをしないといけない。皆さんとともに新しい横浜の姿を描き、実現したい。

◆坪倉良和氏(無・新) 山下ふ頭は「食の拠点」

 横浜へのIR誘致構想をきっかけに「山下ふ頭をどう活用していくのか」が市長選の焦点となっている。これは大チャンスだと感じ、立候補を決意した。

 山下ふ頭に魚、食肉などの市場機能を集約し、さまざまな料理もふるまう「食の拠点」を設けたい。観光客のためだけでなく、食育の場としても活用すれば、市民生活へも貢献できる。

 政治家、行政、企業、市民からなる「未来創造会議」を設け、市民参加と情報公開も実現する。政治の透明性を高め、横浜で地方分権の見本を示したい。

 だれもがチャレンジ出来るようなお金や手間のかからない選挙をしたい。市場での本業をしっかりやりながら戦っていく。

◆福田峰之氏(無・新) IRの収益は子育て財源

 今回の主要政策は「デジタル都市」「子どもファースト」「再エネ都市」の三つだ。デジタル政策で市民が役所に行かなくてもサービスが受けられるようにし、子育てを支援することで財源も増え、みんなが住みやすい街にしたい。上瀬谷通信施設跡地はテーマパークではなく、再生可能エネルギーの創設拠点にする。

 新型コロナウイルス対策で「リアルの選挙事務所」は設置しなかった。市民に「外出するな」と言っているのに、政治をする側だけ集まるわけにはいかない。

 カジノを含む統合型リゾート施設(IR)は賛成だ。将来的に財源は不足するのでIRは必要。年間600億円の納入金は子育て支援に使わせてもらう。

◆山中竹春氏(無・新) データ基づくコロナ対策

 横浜で新型コロナウイルスの感染爆発が起きている。コロナのことをよく知っている専門性を生かし、科学的な根拠、客観的なデータに基づいて効果的な対策を行う。カジノを含む統合型リゾート施設(IR)誘致なんて議論している余裕は横浜にない。IR構想自体に反対で、山下ふ頭、横浜のどこにもカジノは未来永劫(えいごう)つくらせない。

 高齢者福祉、勤労世代や子育て支援の強化などに対して市民の声を聞き、反映させる市政を取り戻したい。75歳以上の高齢者の敬老パス自己負担ゼロ、子どもの医療費ゼロ、出産費用ゼロの三つのゼロを目指す。開国の地にふさわしいオープンで多様性のある政治を横浜で実現する。

◆林文子氏(無・現) IRの誘致は将来財源確保

 3期12年、市のためにしっかりやってきたという自負がある。市の30年後を考えると、医療、福祉、子育て、高齢者対策などにお金がかかる。そこで観光事業を盛んにしようとIR(カジノを含む統合型リゾート施設)誘致に手を挙げた。

 自民党も公明党もやろうと言っていたのに、国の戦略を覆し、突然やらないということになった。IR誘致のチャンスを逃すことは出来ない。私が立候補しないと市民の方の選択肢がなくなってしまう。

 これまで取り組んできたのはコロナ対策。市内医療機関の治療スキルは高く、空き病床を機能的に動かし、病床の逼迫(ひっぱく)はない。安心してほしい。コロナの後に必ず経済を復活させる。

◆松沢成文氏(無・新) 新発想でまちづくりを転換

 今回の選挙は停滞して混乱した市政を続けるのか、それとも横浜をフルモデルチェンジして全く新しい発想でまちづくりを進めるのか。これが最大の争点だ。

 まずはコロナ対策。ワクチン接種最速化プランをつくり、現役世代、特に若い人に打ってもらう。カジノは禁止条例をつくる。日本の近代化と文明開化をリードしてきた横浜はカジノの街ではなく、英語の街として国際化に対応していく。

 もう一つは中学校給食。600億円かけるオペラ劇場整備は中止し、できれば5年以内に、温かい栄養バランスの良い給食を全員に食べてもらう。

 選挙のプロは資金や組織力、知名度があれば勝てると言うが、一番重要なのは政策だ。

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