東京五輪閉幕 「復興」の理念、コロナの前にかすむ

© 株式会社河北新報社

東京五輪の閉会式で入場した各国の旗手=8日午後8時20分ごろ、国立競技場(写真映像部・高橋諒撮影)

 夢のひとときが過ぎ去った。
 世界中のアスリートが達成感に満ちた表情を浮かべる。この時だけは勝ちも負けもない。普段まとう闘気を脱ぎ、はじける笑み。重圧、責任、全てから解放されたように手を振り、はしゃぐ。
 日本勢は史上最多58個のメダルを手にした。この1年は五輪開催を願うことさえとがめられた時があった。耐えて忍んで、一瞬に人生を懸けた。
 メダルラッシュに国内は沸いた。敗者の涙に共感した。大会の勝者は、やはり選手たちだ。
 残念ながら無観客の会場に熱狂はない。静まりかえった会場は寂寞(せきばく)としていた。
 卓球混合ダブルスの水谷隼(木下グループ、青森山田高-明大出)伊藤美誠(スターツ)組が優勝し抱き合っても、野球の侍ジャパンが金メダルを決め歓喜の輪をつくっても、同じ熱量で笑う人はそこにいない。空気はすぐ冷める。観衆の熱気があって初めて、五輪は成り立つと思い知らされた。
 一歩、競技場の外に出れば、世界は新型コロナウイルスにあえぎ続けている。会期中、国内は緊急事態宣言とまん延防止等重点措置の対象地域が拡大。東京の新規感染者は1日5000人を超え、国内の感染者数は連日最多を更新し続けた。
 大会関係者からも感染者が相次いだ。「安全安心な大会」だったかどうかはまもなく答えが出る。
 1964年大会は日本スポーツ界の夜明けとされ、戦後復興の象徴になった。東日本大震災からの復興五輪を掲げた今大会。理念は利用されるだけ利用され、コロナの前に亡失した。
 無観客になった分の財政負担など問題は数多い。祭りの後、残されたものは寂しさだけではない。
(東京支社・佐藤夏樹)