女性議員ならではの葛藤とは?クオータ制は導入するべき?乙武洋匡が稲田朋美氏に聞く!

選挙ドットコムでは、乙武洋匡氏をMCに迎え選挙や政治の情報をわかりやすくお伝えするYouTube番組「選挙ドットコムちゃんねる」を毎週更新中です。

今回は2020年7月18日に公開された対談の様子をご紹介。ゲストは自民党・稲田朋美議員です。女性議員としての苦労やクオータ制について伺いました。

 

女性議員が感じる現在の政界について

乙武氏の最初の質問は、永田町における女性議員の比率について。

稲田議員は、「私が初当選したのは2005年の郵政選挙で、女性候補者をたくさん立てたときだった。同期で16名の女性議員がいたものの、今残っているのは半分以下。政権奪還時も女性議員が11名いたが、今は5名になっている。永田町での女性議員は決して増えていない」と話しました。

以前、乙武氏が野田聖子議員にインタビューをした際は、「私が当選したときは女性用トイレを探すのも大変な時代だった」と話していたそうで、「この世界で女性が生きていくのは一筋縄にはいかないのだろう」と乙武氏は感じたそうです。

稲田議員は、「コロナ対策でも女性目線が欠けていると感じることが結構あった。たとえば、特別定額給付金は夫婦円満であることを前提に給付を決めたが、そうでない世帯もある。政策を作っていく過程に女性議員が入っていない現状は変えていくべきだ」と話しました。

これに対し乙武氏も、「政策決定者のなかに子育てを身近にしてきた方がいないと、週明けからいきなり全国一斉休校なんてことになってしまうんだなと感じた。子どもを抱えていれば、共働きが多いなかで仕事のやりくりができないからもう少し準備期間を設けようという発想になると思う。同じ属性の方々だけで意思決定をしてしまうことのリスクを感じさせられた」と話しました。

稲田議員は、「あのときも色々な立場の女性が不安を感じていた。これからの政策決定には女性の目線が重要だ」と話しました。

憲法14条とクオータ制

女性議員の割合を増やす方策として稲田議員が言及した憲法14条の改正案について、反対意見も多かったそうです。

稲田議員は、「憲法14条に性別の差別はいけないと書かれてあることは重々承知している。でも、どうやって女性の国会議員を増やすかと考えたときに、何かしらの強制的な手段をとらないとダメ。諸外国では、とある時期から国会議員に占める女性の割合が伸びているが、日本はずっと変わらないまま」と話し、フランスの例を挙げました。

「20年くらい前は、フランスも10%程度しか女性国会議員がいなかった。その状況を変えるために憲法を改正してクオータ制を導入した。何かひとつ加えることによって飛躍的に伸びる例をみて、憲法14条に、クオータ制が合憲になるような規定を入れる必要があると感じた。それをやることによって、女性が勇気づけられると思った」と話しました。

これを聞いた乙武氏は、「私も賛成したい。一方で、どこまでクオータ制を取り入れるべきか自分のなかで結論が出ていない。性別だけでなく年代のクオータ制を採用したほうが良いのか、国会議員に占める健常者と障がい者の割合を是正すべきかなど、考えていたらキリがない。なぜ性別だけクオータ制を採用して他の属性に関しては採用しないのかというところの線引きが難しい」と投げかけます。

稲田議員は、「その通りだと思う。私も最初はクオータ制に反対だった。それは、能力さえあれば投票されるはずだという考えや、クオータ制を導入することで、能力があって当選したはずなのに、女性だから下駄を履かされたと思われることがかえって良くないとの考えがあったから。でも、初当選から15年以上が経つなかで現状は全く変わっていない。何かやらないといけない」と話しました。

 

女性議員ならではの葛藤

稲田議員は過去の体験を振り返ります。

「2019年の暮れに、未婚のひとり親への税制優遇に関する議論があった。伝統的家族を大切にする自民党の立場からすると、最初に結婚しているか結婚していないかの差が大きい。離婚したり未亡人になったりした人は救うが、最初から結婚していない人は、ふしだらか自立していないかのどちらかだと言われた。それで女性議員が運動を起こしたが、女性議員が10人発言しても無視される。女性議員の人数を増やさないと発言を取り上げてもらえないと実感した」と話しました。

自民党の都道府県別女性国会議員数をみてみると、九州地方と四国地方には女性国会議員が1名もいないことがわかります(2020年7月時点)。また、他の道府県も0名か1名ばかり。

この結果をみた乙武氏は、「少なくとも九州地方や四国地方では、自民党内に女性の声が反映されにくいということがわかりますね」と投げかけます。

稲田議員は、「このデータは比例代表制での結果であるため違う部分があるかもしれないが、女性の意見は非常に反映されにくいと思う」と話しました。

乙武氏は最後に、「女性が政治家を志していくなかで先輩としてメッセージはありますか?」と質問。稲田議員は、「政治は男性のものという考え方をまずは払拭すること。(女性議員の数が)少ないと批判もされやすい。政治は、多様な意見があったほうが良い政策もうまれるから、女性には特に政治を志して欲しいです」と話しました。

 

稲田朋美氏プロフィール

1959年福井県生まれ。早稲田大学卒業後、弁護士業を経て政界へ。2005年の郵政選挙で初当選した「小泉チルドレン」の1人。以後再選を重ね現在は5期目を務める。自民党女性局次長、内閣府特命担当大臣(規制改革)・行政改革担当、自民党日本経済再生本部長、自民党政務調査会長、防衛大臣、自民党筆頭副幹事長・総裁特別補佐、自民党整備新幹線等鉄道調査会会長、自民党幹事長代行などを歴任。自民党政務調査会長だった2016年に「性的指向・性自認に関する特命委員会」を設立し、現在は委員長を務めている。

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