ライオンズの若き龍・綱島龍生選手の活動報告 〈7〉きみの一番の魅力は

 7月30日。長引く梅雨の晴れ間の中で、綱島に笑顔がのぞいた。

 四回の守備から遊撃に入り、この日の第2打席の2球目。北海道日本ハムファイターズの斎藤佑樹投手から放った1本は、綱島がずっと欲しかったものだった。

 「三遊間に強い打球を打つという練習をやっていて、試合前も上本(達之)コーチから〝三遊間狙っていけよ〟と言われていたのでそこを意識して打席に入りました」。試合後の綱島は「気持ち良かったです」と泥だらけのユニホーム姿で笑顔を見せた。

 守備、打撃ともに、まだ課題は残る。ただ、チームが遠征時に所沢に残留し、黙々と白球と向き合う過程が、自身の成長につながっていることは確かだ。

 そんな綱島を遠くから応援しているのは、育成アマチュア担当の鈴木敬洋。3年前、綱島をスカウトしたのがこの男だった。

 出会いは雪の積もる糸魚川白嶺高の体育館。ノックを受けている姿を見て「お世辞にも上手とは言えなかったけど、良い素材と身体能力に魅力を感じて、そこから新潟に足を運ぶようになりました」と当時を振り返る。鈴木はそれ以来、綱島を金の卵と信じてその冬、北陸新幹線に乗って、何度も綱島の元に通った。

 春の訪れとともに、その潜在能力を再確認した試合がある。「僕が見ていた練習試合で、綱島が初球にフルスイングをしてホームランを打った試合が一番印象に残っています。それを見て一気に虜(とりこ)になってしまって。縁もあったのかなと思います」

 それは、高校の監督から「三振してもいいからフルスイングしてこい」と言われて送り出された打席。まさに鈴木が言うように、強力な〝縁〟が引き寄せた不思議なシーンだった。

 高校時代の綱島は、自分から積極的に話し掛けるタイプではなく、寡黙で素朴な青年だった。プロに入ってからは、会うたびに表情も明るく、積極的に話し掛けるように。鈴木も「頼もしくなった」と年を重ねるごとに大きくなるその姿に目を細める。

 鈴木は今の綱島に語り掛ける。「(試合に出られないこともあり)練習の日々が続いて悔しい思いをしていると思いますが、〝きみの一番の魅力〟は何かな?」。他でもない自らがライオンズに欲しかった人材だ。

 「リストが強くて150キロの球だって打てる。そのバッティング、強い球を打てるという長所をどんどん伸ばして、何か一つ飛び抜けたものを印象づけてレギュラーを勝ち取ってほしいと思っています」。少しずつ大きく成長していく背番号63に、きょうも遠くからライオンズの中心選手になることを夢見ている。

ライオンズ周年ユニホームを着る綱島(球団広報部撮影)

 綱島は4日、駒澤大との練習試合で、四回、右翼超えに今季初本塁打を放った。「打った瞬間、いくかもしれないと思った。打席の中で、弱く、合わせてしまうスイングになっている気がしたので、強く振ってみようと思って打席に入った」と話した。力強いスイングから大きく、強い打球が生み出された。今後も心掛けるつもりだ。(西武ライオンズ広報部)

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