横浜市長選挙が8月8日に告示され、8月22日に投開票日を迎えます。
この選挙では最大の争点としてIR誘致が挙げられていますが、そもそもIRとは何なのか、IR誘致はどのような影響があるのかといった疑問を持っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、以下の5つの疑問についてわかりやすく解説いたします。
- IRとは?カジノとの違いは何?
- 横浜市がIR誘致に名乗りを挙げた背景は?
- IRはギャンブル依存症を助長する?その対策は?
- コロナ禍でIRを誘致して、うまく経営できるの?
- 横浜市長選挙では誰がIR賛成、誰がIR反対?
1. IRとは?カジノとの違いは何?
そもそも「IR」とは何のことなのでしょうか。IRとは、カジノを含む統合型リゾートと呼ばれるものです。
IR=カジノではなく、世界のIRはカジノの他にホテル、ショッピングモール、会議場、展示場、劇場、公園のような様々な施設が集まったものになっています。
IRが他の総合施設と比べて特徴的なのは、IRの売上の大半をカジノが占めているということです。
世界の主要なIRでは、マカオで約9割、シンガポールで約7割、ラスベガスで約4割の売上を各カジノが占めており、収益の大半をカジノで稼ぐ構造が確立されています。
日本がIR誘致に取り組もうとしている理由は、観光産業および経済成長の柱としてIRが切り札になると期待されているからです。少子化が進み国内需要に限界がある日本は外国からの観光産業に力を入れてきており、IR誘致もその一環です。
2020年に公表された横浜市の試算によれば、IRの年間の訪問者は最大3900万人に上ることが見込まれるとのことです。
まとめ
・IRとは「カジノを含む統合型リゾート」
・世界の主要なIRでは、収益の大半をカジノで稼ぐ構造になっている
・日本の観光産業および経済成長の柱としてIRが期待されている
2. 横浜市がIR誘致に名乗りを挙げた背景は?
横浜市がIR誘致に名乗りを挙げた理由のひとつは、IRを誘致することによって税収の増加が期待できるからです。
横浜市の税収構造には課題があります。横浜市は日本一の政令指定都市と呼ばれる市にもかかわらず、法人市民税の割合が他の政令指定都市と比較して低く、個人市民税の割合が高くなっています。
そして、2065年には横浜市の生産年齢人口が現在の3分の2まで減少すると見込まれており、今後は個人市民税の税収も少なくなることが予想されます。
このような背景で市の行政サービスを維持するためには、何か個人市民税以外の税収を増やしていくことが必要となっていきます。IRは横浜市の税収構造の課題を解決するための切り札としても考えられています。
先述の横浜市の試算によれば、IR誘致による毎年の税収は860億円から1000億円とされています。
現在公営ギャンブルと認められている競馬や競輪、競艇、オートレースの収益は自治体の予算にも組み込まれています。日本にIRができれば、公営ギャンブルの中にカジノが仲間入りをすることになります。
では、実際にIR誘致が決定したらどうなるのでしょうか。実はすぐに建設が始まるわけではありません。
IR誘致に名乗りを挙げた自治体の中から国が最大3箇所を選び、2022年後半~2023年頃に正式にIR候補地が決定される予定です。
今回の選挙で選ばれた横浜市長の任期中にIRが誘致されるのかされないのか、それとも名乗り挙げないのかが決まることが「今回の選挙でIRは争点である」と言われている理由のひとつです。
2021年8月時点での有力なIR候補地は、大阪、横浜、長崎、和歌山、愛知、東京等です。
まとめ
・横浜市は個人市民税以外の税収を増やしていきたい
・IR誘致による毎年の税収は860億円から1000億円と試算されている
・IR誘致が正式決定するのは2022年~2023年頃
3. IRはギャンブル依存症を助長する?その対策は?
一方で、IRが日本にできることで、特に問題視されているのがギャンブル依存症です。
日本ではパチンコ等によるギャンブル依存症が蔓延している実情があります。
厚生労働省の調査によれば、ギャンブル依存症の疑いのある人は成人の3.6%=約320万人に上ると言われています。
この割合は世界でも突出して高く、IR誘致によってギャンブル依存症の蔓延が加速するのではないかと懸念する声も上がっています。
そこで、日本では、依存症対策の先進事例であるシンガポールをモデルに、日本と在日外国人に対して入場料6000円を課す予定を立てました。
同時に、入場時にマイナンバーカードの提示を義務づけることで、政府のカジノ管理委員会が利用回数を把握し、利用回数が上限を超えると入場できない仕組みを作るとしています。
まとめ
・IRがギャンブル依存症者の多い日本にできることを懸念する声が上がっている
・依存症対策として入場料の設定やマイナンバーカードの提示による利用制限が挙げられる
4. コロナ禍でIRを誘致して、うまく経営できるの?
新型コロナウイルス感染拡大の影響で観光客が激減している日本ですが、IR誘致はうまくいくのでしょうか。
他の観光産業と同様に、世界のIRもダメージを負っているのが実情です。
例えば、アメリカでは2020年4月に約1000箇所のカジノがすべて閉鎖に追い込まれており、営業を再開しているIR業者も厳しい経営状況にあります。
「カジノと言えばラスベガス」というイメージを持っている方も多いと思われますが、日本でのIRに関心を持っていたラスベガス・サンズは2020年5月に撤退を発表しました。
その他にも、既に横浜に事務所を構えていたウィン・リゾーツも事務所閉鎖を決める等、事業縮小に向けた動きがでています。
オンライン路線へのシフトチェンジを試みているMGMリゾーツ・インターナショナルは、日本への投資はよほどのリターンがなければ難しいとの立場を明らかにしています。
デルタ株、ラムダ株の感染拡大もあり、新型コロナウイルス収束後も従来型のIRが成立するのか、日本のみならず世界の観光産業が大きく変化するのかは不透明な状況です。
まとめ
・新型コロナウイルスの影響で世界のIRもダメージを負っている
・撤退や縮小、オンライン化にシフトチェンジしたIR業者も
・新型コロナウイルス収束後の状況は不透明
5. 横浜市長選挙では誰がIR賛成、誰がIR反対?
8月8日に告示される横浜市長選挙では、8月6日時点で8名の立候補予定者が判明しています。そのうちIR誘致に賛成が2名、反対が6名という構図です。
横浜市長選挙の候補者は誰?基本情報まとめ【横浜市長選2021】>>
IRに賛成している候補者
・福田峰之氏(元衆議院議員)
・林文子氏(現横浜市長)
IRに反対している候補者
・太田正孝氏(横浜市議会議員)
・小此木八郎氏(前衆議院議員)
・坪倉良和氏(水産仲卸会社社長)
・山中竹春氏(元横浜市立大学医学部教授)
・田中康夫氏(元長野県知事)
・松沢成文氏(参議院議員、元神奈川県知事)
本日20時05分から!IR誘致、賛成?反対? 候補者に直接聞いてみます!
選挙ドットコムが運営するYouTubeチャンネル「選挙ドットコムちゃんねる」では、MCに乙武洋匡氏を起用し、横浜市長選挙立候補予定者を招いてリレートーク形式のオンライン討論会を実施します。
IRに賛成の立候補者がどうIRを運営していくのか、反対の立候補者が税収の課題をいかに解決していくのか等、候補者の生の声に注目です!
横浜市長選挙立候補者と公開Q&Aセッション|乙武洋匡が聞く!横浜市長選2021生放送
日時:8月10日(火)20時05分開始予定
MC:乙武洋匡
出演者:横浜市長選挙に立候補を予定している皆様(調整中)
視聴者の皆様からの質問をTwitterのハッシュタグ「#横浜市長選候補者に質問」で募集しております!
※各候補者の持ち時間はそれぞれ10分~15分を予定しております。
※当日の状況等により配信時間や内容が変更される場合がございます。ご了承くださいませ。