<社説>コロナ感染爆発 危機感共有し対策徹底を

 沖縄で新型コロナウイルス感染が爆発的に拡大している。4日に602人が確認されて以降、8日まで1日当たりの感染者は連日500人を超え、高止まりが続く。4日からの1週間で感染者数は3601人に上る。10万人当たりの人口比の感染者数も再び全国ワーストだ。感染力の強い変異株、デルタ株に置き換わりが進む。 この第5波はコロナ禍が始まって以来、最悪の状況だ。外出自粛など県民による自制だけでは到底抑えられない。危機感を共有し、水際での人流制限など抜本的な封じ込めが必要だ。

 6日に開催された県の感染症対策専門家会議では、コロナ病床の空きが一時的に2床にまでなったことが報告された。搬送先の調整のため救急隊員の現場滞在時間は延びている。県立南部医療センター・こども医療センターは予定入院も中止した。

 第5波の特徴は、日々の感染者数のうち20~30代の感染者数が高い割合を示すなど若年層が増えていることだ。

 小児(0~15歳)の入院も4月の2人から、7月は28人、8月は6日時点で9人と急増した。基礎疾患のある乳児が重症化する事例があり、妊婦の感染も拡大している。小児や妊婦への感染経路は家庭内感染がほとんどで、それぞれの医療体制も逼迫(ひっぱく)している。

 県疫学統計・解析委員会によると、ワクチン接種率が高いほど感染者数が少なくなる相関があるといい、専門家はワクチン接種が感染者数を減らす有効な手段と見ている。一方、20~30代の若い世代の接種は市町村別で進んでいない。琉球大学の職域接種でも、6日時点で予定の3割ほどしか学生が集まっていない。

 感染急拡大の要因として、専門家会議の藤田次郎座長(琉球大学大学院教授)は観光客が沖縄に入って来ていることを挙げ、水際対策の重要性を指摘した。

 7日からお盆休みの時期に入った。県外の鉄道や航空便の予約状況は2019年には及ばないが、コロナ禍の20年を上回る状況だ。お盆休みを利用して沖縄を訪れ、さらなる人流の増加も予想される。20日からは旧盆も始まる。

 玉城デニー知事は県内の医療界と経済界、市町村の代表者と共に緊急共同メッセージを発表し、2週間の外出自粛などを呼び掛けた。しかし県民に求めるだけでは拡大を抑えられないのが現状だ。

 空港など沖縄の玄関口を利用する人に対し、PCR検査を義務化するなど抜本的な対策が必要だ。県民がいくら自粛に取り組んでも県外からの人流に対処しなければ防ぎようがない。

 政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は「人々の意識に与えた影響はある」と、五輪による気の緩みと感染拡大の関連に言及した。政府は速やかに人流に抜本的に対処し、感染拡大を封じ込めなければならない。

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