メッシPSG移籍のグレーすぎる背景 〝FFP逃れ〟の裏技連発か

「PARIS」Tシャツでパリに到着したメッシは笑顔で手を振る(ロイター)

スペイン1部バルセロナを退団したアルゼンチン代表FWリオネル・メッシ(34)がフランス1部パリ・サンジェルマン(PSG)に加入することで合意したとフランス紙「レキップ」(電子版)が報じた。今回の移籍の裏側では、PSGが反則ギリギリのきわどい手法を用いた模様。その〝裏技〟の手口とは――。

PSGは以前からメッシ獲得に熱心だったが、財政健全化を目的としたファイナンシャル・フェアプレー(FFP)が障害になるとみられていた。今夏の移籍市場で大型補強を続け、メッシ獲得なら支出が大きくかさんで規定に違反してしまう恐れがあるからだ。しかしPSGはメッシ獲得のために数々の〝裏技〟を使ったようだ。フランス公共放送「フランステレビジョン」が、グレーな3つの手法を指摘した。

まずは「メッシの場合、クラブまたはカタールのオーナーとつながりのあるパートナーや企業を介したシナリオが想像できる。PSGだけが直接給与を支払う場合、メッシと契約する手段を持ち合わせないからだ」。メッシへの報酬の支払いにおいてスポンサー企業に〝協力〟を仰ぐことで、クラブによる支出を抑えてFFPの規定内にとどめたというわけだ。

また同局はPSGによる〝根回し〟が効果を発揮したと分析する。フランスリーグにおけるFFPの順守は同国の財務監査機関である経営監視委員会(DNCG)が目を光らせているが、スポーツ経済学の権威であるローザンヌ大学のミカエル・テリエン教授によれば「DNCGが関心を持っているのは、クラブが破産しないことだけだ。今後1年半でPSGにとっては問題ないと考えられている」。

DNCGは国内クラブに対して給与総額がクラブ収入の70%を超えてはならないと規定する新規則を発効する予定だったが、コロナ禍を理由に2年延期を決定。この〝猶予期間〟ではFFPの適用を大目に見る方針で、今回も問題にならない見通し。バルセロナがスペインリーグによるFFPの厳格な適用でメッシとの契約を断念せざるを得なくなったのとは対照的だ。

FFPを推進してきた欧州サッカー連盟(UEFA)の存在もあるが、こちらへの対処も万端だったようだ。現在UEFAではFFPの大胆な刷新が議論されており、移籍市場を活性化させるために規制を緩めることを検討。そうした流れの中で「PSGは反スーパーリーグ(SL)構想のヒーローとして、UEFAから〝ポイント〟を稼いだ」。欧州サッカー界を揺るがせたSL騒動でPSGは当初より一貫して誘いを断ることでUEFAに貸しを作り、クラブへの処遇で有利に働くように画策したというわけだ。

悲願であるメッシ獲得を果たしたPSGだが、その強引な手口は新たな波紋を呼びそうだ。

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