下馬評覆して前半戦躍進のヤクルト OB飯田哲也氏が挙げる優勝へのキーマンは?

OB飯田哲也氏が挙げるヤクルト後半戦のキーマンは?【写真:荒川祐史、上野明洸】

飯田哲也氏は“後継者”の塩見に注文「三振を減らしてほしい」

東京五輪による中断期間を終え、プロ野球は13日から再開する。前半戦を振り返ると、セ・リーグで“大健闘”したのが、ヤクルトだ。2年連続で最下位に終わり、今季開幕前の下馬評も決して高くなかったが、42勝32敗9分けで折り返し。首位・阪神に2.5ゲーム差、2位・巨人には0.5ゲーム差の3位につけている。ヤクルトOBで現役時代に名外野手として鳴らした野球評論家・飯田哲也氏が、その要因を分析し今後を占う。

「村上が成長し、主軸として存在感を増したことが一番でしょう」。開口一番、飯田氏はそう指摘した。プロ4年目・21歳の村上宗隆内野手は今季全83試合で4番を務め、リーグ2位の26本塁打、同3位の61打点。「開幕直後、コロナ禍で主力のベテランがいなくなった時、村上を中心にガタッといかず、むしろ勝ち出した。あの粘りが現在の位置につながっている。若い選手に自信が生まれ、ベテランが戻って来た時にさらにパワーアップしました」と分析する。

3月31日に青木宣親外野手、内川聖一内野手、川端慎吾内野手が、新型コロナウイルス陽性判定を受けた西田明央捕手の濃厚接触者と判定され離脱。それでも同日以降、青木不在の13試合を7勝3敗3分で乗り切り、5位から3位に順位を上げた。

6月以降は1番・塩見泰隆外野手、2番・青木、3番・山田哲人内野手、4番・村上、5番ホセ・オスナ内野手、6番・中村悠平捕手、7番ドミンゴ・サンタナ外野手までがほぼ固定され、安定した得点力を発揮している。特に4年目の塩見は成長著しく、阪神・近本と並びリーグトップタイの17盗塁、チームトップの打率.298、8本塁打31打点をマーク。塩見が担っている「1番・中堅」は飯田氏がヤクルト黄金期に務めたスポットでもある。

「まだ打撃に雑なところがあるけれど、今のところ打率を残しているし、足も速い。さらに確実性を高めていけば、1番から外されることがなくなるでしょう」と飯田氏は評する。塩見は阪神・佐藤輝明内野手に次ぐリーグワースト2位の87三振を喫しており、「なんとか三振を減らしてほしい。ちょこんと当ててゴロを転がすことを心がければ、足が速いのだから内野安打が増えるはず。自分の武器を理解して、もっと生かさないともったいないですよ」と、もうワンランクアップを期待する。

優勝のキーマンは2人「山田が打率3割を打ち、石山が抑えに復帰できれば強い」

2015年以来6年ぶりのリーグ優勝へ、キーマンは誰か? 飯田氏は「山田と石山(泰稚投手)」の2人を挙げた。

トリプルスリーを3度達成している山田は今季、リーグ2位の65打点、同3位の25本塁打。一方で打率は.268、盗塁は開幕直後に下半身のコンディション不良に見舞われた影響もあってか3つにとどまっている。飯田氏は「僕はもともと、山田のことをホームラン打者とは考えていない。打って(四球を)選んで走って貢献してくれるのが一番いいと思います。彼の打率が3割台に上がってくれば、チームはもっと強くなりますよ」と言う。東京五輪では要所で頼もしさを見せ、大会MVPも獲得。侍ジャパンでの上昇気流を後半戦に生かせるか。

石山は昨季20セーブ、防御率2.01をマークし、今季も守護神としてスタートしたが、4月下旬以降は失点シーンが増えた。6月20日に2軍落ち。その時点で0勝4敗10セーブ、防御率5.40の不振だった。それでも調整を経て7月10日に1軍復帰以降は、3試合連続無失点と上向きで前半戦を終えた。現在はスコット・マクガフ投手が守護神を務めているが、飯田氏は「石山が本来の調子を取り戻して抑えを務められるようになれば強い」と断言する。

ヤクルトは前回のリーグ優勝(2015年)も2年連続最下位の翌年だった。今季はその再現がなるだろうか。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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