大津~京都を結ぶ要衝
往時の名残伝える「大津百町」
神社の境内を路面電車が横切る珍しい光景。浜大津~京都を結ぶ京阪電車京津線です。区間の山間部は、百人一首「知るも知らぬも逢坂の関」(蝉丸)の歌でも知られる難所。大正時代に開通したこの電車は、路面電車・山岳鉄道・地下鉄と3つの異なる路線を走る日本で唯一のハイテク電車となり、今なお沿線住民や旅行者の足として重宝されています。
JR大津駅から京阪浜大津駅・大津港の一帯は、かつて物資の集散を担う琵琶湖の「港町」として、三井寺の「門前町」として、そして江戸時代には百の町に1万5千人以上の人々が暮らす活気あふれる「宿場町」として繁栄し、“大津百町(おおつひゃくちょう)”と称されていました。京都に近いこともあり京町家の影響を受けた町家が点在、近年は高齢化などで空き家が増加していますが、歴史ある大津町家を宿泊施設やコミュニティ施設として活用する取り組みが進められています。
人情味あふれる店舗が
人々を引き寄せる
この辺りの丸屋町、菱屋町、長等の3商店街(通称「ナカマチ商店街」)では、後継者不足や大型商業施設などの影響で店舗が減少。それでも人々が足繫く通う活気のある店が。「ここの漬物や佃煮の味が好き」と地元客に評判なのは、菱屋町商店街で欅の大看板を170年以上守る八百與。
また、自家栽培する近江高島大納言小豆と県産の羽二重粉の豆餅、季節の果実と葛を使った和菓子が人気の茶菓山川。
旧東海道沿いには県外からもマニアが訪れる名店「中川誠盛堂茶舗」が。朝宮茶をはじめとする良質な近江茶、和紅茶、中国や台湾で買い付けたこだわりの茶葉などをじっくり試飲して購入することができます。
親しみやすい接客、真正直な仕事…華やかな観光地とはひと味違った大津百町の風景はどこか懐かしく、訪れる人を魅了します。
■情報誌「自悠時間」滋賀 2021年7月20日号掲載