古さと新しさが共存するまち「大津・浜大津」 懐かしさ味わうタイムトリップ「大津百町」【情報誌「自悠時間」】

大津~京都を結ぶ要衝

往時の名残伝える「大津百町」

神社の境内を路面電車が横切る珍しい光景。浜大津~京都を結ぶ京阪電車京津線です。区間の山間部は、百人一首「知るも知らぬも逢坂の関」(蝉丸)の歌でも知られる難所。大正時代に開通したこの電車は、路面電車・山岳鉄道・地下鉄と3つの異なる路線を走る日本で唯一のハイテク電車となり、今なお沿線住民や旅行者の足として重宝されています。

大津町家の宿 粋世(いなせ)昭和8年に米穀商を営んでいた大津町家(登録有形文化財)を宿泊施設に。木・金・日曜日は、地元の製氷店から仕入れる純氷を用いたかき氷店として営業。

JR大津駅から京阪浜大津駅・大津港の一帯は、かつて物資の集散を担う琵琶湖の「港町」として、三井寺の「門前町」として、そして江戸時代には百の町に1万5千人以上の人々が暮らす活気あふれる「宿場町」として繁栄し、“大津百町(おおつひゃくちょう)”と称されていました。京都に近いこともあり京町家の影響を受けた町家が点在、近年は高齢化などで空き家が増加していますが、歴史ある大津町家を宿泊施設やコミュニティ施設として活用する取り組みが進められています。

大津百町館 明治32年に建てられた商家。大津歴史的建造物保存会が管理。大津町家の特徴が残る館内を無料で見学できる。

人情味あふれる店舗が

人々を引き寄せる

この辺りの丸屋町、菱屋町、長等の3商店街(通称「ナカマチ商店街」)では、後継者不足や大型商業施設などの影響で店舗が減少。それでも人々が足繫く通う活気のある店が。「ここの漬物や佃煮の味が好き」と地元客に評判なのは、菱屋町商店街で欅の大看板を170年以上守る八百與。

八百與 嘉永3年の創業から170年以上の歴史を持つ漬物店。菱屋町商店街でひと際活気を集めています。

また、自家栽培する近江高島大納言小豆と県産の羽二重粉の豆餅、季節の果実と葛を使った和菓子が人気の茶菓山川。

茶菓 山川 地産地消、素材の良さを最大限に引き出す。和菓子のほか、パフェなどのイートインも可。

旧東海道沿いには県外からもマニアが訪れる名店「中川誠盛堂茶舗」が。朝宮茶をはじめとする良質な近江茶、和紅茶、中国や台湾で買い付けたこだわりの茶葉などをじっくり試飲して購入することができます。

中川誠盛堂茶舗 江戸時代(安政5年)に東海道沿いで創業。長い歴史で培われた生産者との絆、シングルオリジンによるラインナップで皇室や世界にも認められる品質を守り抜いています。試飲あり。

親しみやすい接客、真正直な仕事…華やかな観光地とはひと味違った大津百町の風景はどこか懐かしく、訪れる人を魅了します。

天孫神社 奈良時代に創建。湖国三大祭の一つに数えられる「大津祭」の元宮。春は桜の名所として知られる。
大津祭曳山展示館 大津祭をあらゆる角度から紹介。原寸大の曳山の模型が圧巻の迫力。

■情報誌「自悠時間」滋賀 2021年7月20日号掲載

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