「アイドル」という存在がステージ上の遠い人ではなく、握手などを通じて「交流」できる身近な存在になり、2022年時点で10年ほど経ちました。
その役割を担っているのは「地方・ローカルアイドル」と呼ばれる人たちですが、「大都市圏周辺」のアイドルが大多数。
しかし、福山など備後エリアをメインに活動する、地方アイドルもいるのです。
「福山あいどるくらぶ」は福山を中心に活動し、備後絣(びんごかすり)など、地域文化の発信も担っているアイドルグループ。
「福山あいどるくらぶ」としての活動内容や地方アイドルならではの苦労話など、メンバーインタビューを含めて紹介します。
「福山あいどるくらぶ」とは
「福山あいどるくらぶ」は広島県福山市を歌とダンスで盛り上げるために、2019年9月に結成された、アイドルグループです。
運営は「総合企画グループなでしこ」の道下美津穂(みちした みずほ)さん。
意外と少ない、女性が運営する女性アイドルグループ。
また、「くらぶ」の名がついている通り、本格的な芸能活動を目指すかたはもちろん、アイドルに興味があるという感じでも基本的には参加可能とのことです。
活動エリアは福山・尾道を中心に、岡山県・香川県・愛媛県でも活動しています。
メンバーについて
2019年9月の結成後、増減を経て2022年7月現在は3名で活動しています。
結成メンバーでありリーダーのMIHOさん、あゆさん、そしてB組から昇格したMeiさんの3名です。
ちなみに、MIHOさんは運営の道下美津穂さんの娘。つまり、「親子」で活動しているアイドルグループでもあります。
「親子」ゆえの難しさ、周りからの見方など苦労もたくさんあったようです(詳しくは後半のインタビューで紹介します)。
メンバー全員普段は学校・仕事などを行ないつつ、アイドル活動を行なっています。
小学生ユニット「福山あいどるくらぶB組」
もう1つ、2021年4月より「福山あいどるくらぶB組」を結成しています。
こちらは、いわゆる「研修生」的な雰囲気ですが、小学生ユニットと位置付けられており、将来希望すれば本体の「福山あいどるくらぶ」としても活動できるそうです。
「福山あいどるくらぶB組」は、2022年7月現在 みかんさん・Meiさんの2名で活動しています。
Meiさんは福山あいどるくらぶに昇格しましたが、B組も兼任しています
主な活動内容
地方アイドルとして、主に以下のような活動を行なっています。
- 福山を中心とした、ライブイベントへの出演
- ブログ・YouTube・SNSなどでの情報発信
- 備後エリアのお店や特産品の紹介
福山を中心とした、ライブイベントへの出演
アイドルグループなので、メインとなる活動はライブです。
福山・尾道を中心に、岡山・倉敷など岡山県で開催されるライブにも出演しています。
ライブではオリジナル曲を中心に披露しているそうです。
- Fukuyama Song
- 2人の魔法
- いつかの海
ブログ・YouTube・SNSなどでの情報発信
ライブ以外の活動としては、ブログ・SNSなどでの情報発信も行なっています。
- 公式ブログ
- 公式チャンネル
- Facebookページ
備後エリアのお店や特産品の紹介
また、地方アイドルとしてとくに力を入れているのが、地域との連携です。
具体的には、楽曲・ミュージックビデオ(MV)制作に地元アーティストを起用するなど、地域に根ざした活動を行なっています。
筆者が珍しいと感じたのは、備後エリアで製造されている「備後絣(びんごかすり)」を使用した衣装を着用していることです。
ステージ衣装ではとくに「照明映え」が意識されるため、このような素材を使うのは珍しいでしょう。
比較的近い場所で目にすることの多い、地方アイドルらしい活用方法だと思います。
地方アイドルとしてステージはもちろん、地域情報の発信も頑張る「福山あいどるくらぶ」のメンバーと運営の道下美津穂さんに、活動内容や今思うことについてお話を聞きました。
福山あいどるくらぶのメンバーインタビュー
インタビューは2021年7月の初回取材時に行った内容を掲載しています。
──では、最初に「福山あいどるくらぶ」はどんなグループなのかを簡単に教えてください。
MIHO──
「福山あいどるくらぶ」は、広島県福山市を歌とダンスで盛り上げるため結成されたアイドルユニットです。
歌とダンスはもちろん、福山の観光地とかグルメ情報を紹介しています。
──地方アイドルはたくさんいますし、福山にもアイドルグループは他にあると思いますけど、「福山あいどるくらぶ」として、力を入れていることはなんですか?
MIHO──
「個性」ですかね。メンバーそれぞれの。
B組はちっちゃい子なので、すごいはっちゃけた感じですけど、私たちは「静か」なのかな……(笑)
あゆ──
ただ、そのなかでも個性はあって、「〜担当」っていうのがあるんですけど、MIHOちゃんだったら韓国が好きなので「コリアン担当」。
私はお菓子作りが好きなので、「お菓子作り担当」みたいな感じで、好きなことをわりと全面に出しています。
親子で活動すること
──これはどうしてもお尋ねしたかったのですが……。
「福山あいどるくらぶ」が他のアイドルと比べて変わっているのが、「親子」で活動していることだと思います。これはどこまでオープンにしているものなんですか?
親子だからこそ、苦労したこともあると思うんですが。
道下──
改めて言ってはないんですけど、みんな知っている感じですね。
MIHO──
一番大変だったのが、普段「ママ」って呼ぶんですけど、アイドルの仕事をしているときは「絶対にママって呼ぶな」と言われたことですね。
「道下さん」か「ボス」、のどちらかになるんですけど、名字って私も同じなので違和感あって……(笑)
なので、「ボス」って呼んでます。
ただ、ママからボスを使い分けるのは本当に難しかった……。
あと、「運営さんの娘」だからちゃんとしようと思ってます。ポンコツなんですけど、リーダーでもありますし……。
道下──
一番厳しくはなりますよね。
──ただ、それを逆に見る人も当然いますよね。「娘だからえこひいき」みたいな
道下──
それはもうたくさんありました。
とくに昨年(2020年)の緊急事態宣言時は、外にも出られないし、かといって何か写真とかをあげなきゃと考えたときに、MIHOが家にいるから……。
なので、「運営がMIHOちゃん推し」みたいなことは言われましたね。
ただ、人一倍厳しくはしているつもりです。
それは私の「子供」だからかもしれませんが、MIHOを怒って、みんなに伝えるみたいな、役回りにはどうしてもなってしまいますね。
アイドルの定番「メンバーカラー」がない理由
──福山あいどるくらぶのもう1つ変わっている点として、今のアイドルはどのグループも「メンバーカラー」があり、それを個性というか「識別情報」のように使うと思います。
メンバーカラーをあえて使わなかった理由はあるんですか?
道下──
これは本当に単純な理由で……。
好きなカラーがみんなかぶって、まとまらなかったんです(笑)
なので、カラーじゃなくて「モノ」にしようと……。
あゆ──
ただ、結果的に自分の紹介になるからいいんじゃないかなって思ってます(笑)
アイドル活動を始めた理由
──話を聞いているとすごく「自由」な印象を持つんですけど、逆に「縛り」はあるんですか?たとえば「恋愛禁止」みたいなもの以外で。
MIHO──
ファンのかたにプレゼントとかもらったときは、しっかりお礼をいう。挨拶をするということは、強く意識しています。
あゆ──
あとは今(取材は2021年6月)だと、「日焼け」に気をつけるとか(笑)
毎年言われるので気にしてますね。
MIHO──
あとはまあ、「おデブ」にならないとか(笑)
──思ったより強い縛りじゃない(笑)
ただ、話せないような苦労はそれなりにあっただろうと思います。それでもこの活動を続けている「原動力」みたいなものはなんでしょう?
MIHO──
わたしは小さい頃から歌とダンスが好きで、とくに「AKB48さん」が大好きだったので、アイドルという存在に憧れていました。
3歳くらいから、「私は絶対アイドルになる」って思ってました。
なので、小さい頃からの夢なので続けています。
あゆ──
わたしはそう言われると、小さい頃からアイドルになりたいとかは無かったんですけど、高校生の時にやりたいと思って、わりとすぐ始めちゃいました。
それからもう7年くらい経ちましたね。
なので、長く応援してくれてるかたも、ちょっといるので……。歌って踊る姿を、まだ見せていけたらなって思ってます。
──高校生の時に、何かきっかけがあったんですか?
あゆ──
歌・ダンス・演技がある学校に通っていたんですけど、そこで「ダンスをもっと頑張らなきゃ」となって、スクールに通い始めたんです。
そこに「アイドルクラス」っていうのができて、元々習っていた先生が担当していたので、ちょっとやってみようかなって感じで(笑)
──アイドルというより、ダンスの延長線上だったみたいな?
あゆ──
そうですね。歌うのも好きだったけど、アイドルになりたいかって言われるとそうではなかったかも……。
ただ、高校の先生がアイドル好きだったので、アイドルの曲を踊ることが多くてそれで「楽しいな〜」ってなりました。
──そんな感じでアイドル活動を始めて、いろいろ苦労もあったと思いますが、これを身につけたみたいなことってありますか?
MIHO──
私、物販(握手したりチェキを撮ること)で喋るのがすごく苦手だったんですよ。
書いて、渡して、終わるみたいな(笑)
最近はだいぶ喋れるようになってきました。「最初はすごい清楚なMIHOちゃんだったけど、最近はお笑いだよね」とか言われるくらいには。
なので、今は楽しいです!
あゆ──
実は私、最初の頃どこ見て歌ったらいいか分からなかったんです。
お客さんが目の前にいるんですけど、壁や時計をみてて……。
ある日「それはダメだよな」と思って、アイコンタクトみたいな感じで、お客さんを見られるようになりました(笑)
コロナ禍での活動とこれから
──苦労といえば、地方アイドルの活動はライブなど露出する活動が多く、それがコロナ禍で激減したと思います。アイドルだけではなく、「ステージに関わる人すべて」が影響を受けて大変だったと思いますが、どうですか?
変わったこと、変わらなかったこと、新しく始めたことがあると思うんですが。
MIHO──
2020年夏のライブとかはすべてなくなってしまって、ライブ予定だった日はライブ配信を行なったりしました。
最近はちょっとずつステージに立つ機会は増えましたが、それでも人数制限だったり、コールが制限されていたりするんです。
コロナ前の「コールのあるステージ」が恋しくなりますね(笑)
あゆ──
いつも最後の曲ですってなると「え〜」みたいなのがありましたけど、それもなかったり……。
それで、トークのタイミング作ったりもしたんですよね。
MIHO──
当たり前だったステージがなくなって、1つ1つのステージの大切さに気づきました。
その他にもSHOWROOMの配信などを開始したのも、コロナ後ですね。
──これからの活動について、伝えたいことはありますか?
MIHO──
今、オリジナル曲が3曲あるんですけど、MV(ミュージックビデオ)の撮影を行なってます。
3曲とも作成する予定なので、完成を待っていてほしいです!
また、2021年9月26日には「船町ベイガーデンでのステージイベント」でイベントがあります。
その他、地元のかたや企業さんとタイアップしたようなステージも9月以降予定されているので、楽しみにしていてください。
あと、私たち「福山あいどるくらぶ」、小学生ユニット「福山あいどるくらぶB組」もメンバーを募集しているので、応募を待っています!
おわりに
コロナ前の2019年まで、アイドルグループは数多く存在しました。
しかし、コロナ禍となってから、東京で活動するいわゆる「メジャーアイドル」ですら解散・活動休止が相次ぐ状況……。
お客さんが集まってなんぼのエンタメ業界は、非常に苦しい状況で、支えていく仕組みが必要と感じています。
20年以上アイドルを応援し続けている筆者にとって、アイドルのステージを見ることは生活の一部です。
不要不急の分野なので軽視されがちですが、地方で頑張っている彼女たちの話を聞いて、日々を楽しく生きるために「エンターテインメントは必要」という考えを改めて強くしました。
福山を中心に活動する、備後エリアのアイドルグループ「福山あいどるくらぶ」の活動を知ることで、エンターテインメントを身近に感じてみませんか?
取材協力
- 撮影:佐々木敏行