首位阪神、16年ぶりVの鍵は 巨人はエースの復調が不可欠 専門家がセを占う

巨人・原辰徳監督、阪神・矢野燿大監督、ヤクルト・高津臣吾監督(左から)【写真:荒川祐史】

野口寿浩氏が分析、燕は「坂口が救世主になる気がします」

東京五輪開催に伴う中断期間を経て、セ、パ両リーグが13日に再開される。セでは首位・阪神、2位・巨人、3位・ヤクルトが2.5ゲーム差内で三つ巴の首位争いを展開している。ここから抜け出すためのポイントは何か。現役時代にヤクルト、日本ハム、阪神、横浜(現DeNA)で計21年間捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏が分析する。

予想以上の健闘を見せているのが、昨季まで2年連続最下位のヤクルトだ。東京五輪でもヤクルト勢が活躍。山田哲人内野手は5試合で打率.350、3盗塁をマークし大会MVPに選ばれた。村上宗隆内野手も決勝の米国戦で値千金の先制ソロを放つなど、打率.333の打棒を振るった。「五輪がヤクルトのチーム全体にとって良い弾みになったのではないか。それくらい素晴らしい活躍だった」とOBでもある野口氏は評する。

前半戦は、リーグトップの366得点を挙げた打線が投手陣をカバーした格好。野口氏は「来日1年目の両外国人が機能したことが大きい」と、ホセ・オスナ内野手とドミンゴ・サンタナ外野手を称賛する。オスナは一塁の定位置を確保し打率.315、サンタナは右翼手として.290をマークした。

ヤクルトの外国人選手は投手陣も、先発のリック・バンデンハーク、サイスニード、アルバート・スアレス、守護神のスコット・マクガフと人材豊富。新型コロナウイルス感染拡大を受けて1軍の外国人枠が5人に増えた特別ルール(ベンチ入りは4人)を有効に活用している。「後半戦も外国人選手のうち誰をどう組み合わせて戦っていくか、やり繰りが鍵になると思います」と野口氏は見ている。

ペナントレースが混戦になればなるほど、頼りになるのはベテランの力だ。青木宣親外野手に加え、開幕直後に自打球を右膝に当て2軍で調整を続けていた坂口智隆外野手も中断期間に調子を上げてきた。「チームが苦境に立たされた時に、坂口が救世主になる気がします」と野口氏も期待を寄せる。

阪神は「7回を担うリリーバー」、巨人は菅野が復調すれば「3連覇に近づく」

開幕直後から首位を走ってきた阪神と、最大8ゲーム差をつけられながら現在2ゲーム差に肉薄している巨人はどうか。野口氏は「調子が悪い時にはそのまま負けが込んでしまう阪神より、調子が悪くてもそれなりに野球ができる巨人の方が若干上手かなとは思います」と語る。

2005年以来、16年ぶりのリーグ制覇を狙う阪神は「7回を担うリリーバーが鍵を握る」と指摘する。守護神のロベルト・スアレス投手は中断中に一時帰国した影響で再開後数試合は不在となる見込みだが、状態は悪くなさそう。8回には東京五輪で活躍した岩崎優投手が控える。問題の7回は、好調時には岩貞祐太投手らが担ってきたが、今後は20歳左腕の及川雅貴投手らに期待がかかる。

一方、巨人はコンディション不良で東京五輪代表を辞退した菅野智之投手の復調が不可欠。「彼が中6日で回り、結果を出せる状態に戻ればチームも3連覇に大きく近づくと思います」と野口氏は言う。

Bクラスの4位・中日、5位・広島、6位・DeNAはわずか1.5ゲーム差内にひしめいているが、3位・ヤクルトと中日は10ゲーム差。それでも中日はチーム防御率がリーグトップの3.31で投手力が強みだ。逆にDeNAはチーム打率がリーグトップの.2608、広島もほぼ同率の.2606を誇る。特にDeNAは、リーグで6人しかいない3割打者(規定打席以上)のうち4人(佐野恵太外野手、桑原将志外野手、タイラー・オースティン外野手、宮崎敏郎内野手)を占めている。

「中日の投手陣とDeNA打線を併せ持てば、絶対優勝なのですが……」と野口氏は苦笑。東京五輪で侍ジャパンの守護神を務め上げた栗林良吏投手を擁する広島を含め、上位浮上へのきっかけをつかみたいところだ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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