首位ターンのオリックス、25年ぶりVへのキーマンは? 大混戦のパを専門家が占う

7年ぶりに首位ターンしたオリックス【写真:荒川祐史】

野口寿浩氏が分析、オリは「ベテランと外国人」&鷹は「戦力が揃えば一番強い」

東京五輪開催に伴う中断期間を経て、プロ野球が13日に再開される。パ・リーグは、7年ぶりに首位ターンしたオリックスから2位・楽天、3位・ロッテ、4位・ソフトバンクまで4ゲーム差にひしめく大混戦。6.5ゲーム差の5位・西武、10ゲーム差の最下位・日本ハムを含め激しい優勝争いが展開されそうだ。現役時代にヤクルト、日本ハム、阪神、横浜(現DeNA)で計21年間捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏が、各チームのキーマンを挙げる。

オリックスは、高卒2年目の宮城大弥投手と6年目・30歳の杉本裕太郎外野手が大ブレーク。宮城はハーラートップタイの9勝、リーグ2位の防御率2.10で、エースの山本由伸投手とともに投手陣を牽引している。一方、「ラオウ」の愛称で親しまれる杉本は194センチ、104キロの体格に秘められていた才能が開花。打率.297、リーグ3位の18本塁打、同5位の54打点をマークし、リーグトップの打率.343を誇る吉田正尚外野手と打線を引っ張っている。

野口氏は「このチームはもともと、19歳で遊撃のレギュラーに定着した紅林(弘太郎内野手)、三塁の宗(佑磨外野手)ら有望な若手が非常に多くて、2、3年後が凄く楽しみだと思っていましたが、まさか今季中にここまでやるとは……」と感嘆する。

イチロー氏が主力として活躍していた1996年以来、25年ぶりの優勝も現実味を帯び始めている。野口氏は「若手が一斉に花開きましたが、キャリアの短い選手たちなので、一斉に下降線をたどる恐れもある。そういう時にベテランのT-岡田(外野手)や外国人選手(アダム・ジョーンズ外野手、スティーブン・モヤ外野手ら)が、いかにカバーするかが鍵だと思います」と指摘する。

不気味なのは4位のソフトバンクだ。前半戦は故障者が続出したが、徐々に顔ぶれがそろってきた。5月に右手薬指を骨折したジュリスベル・グラシアル内野手、左肘を手術した守護神・森唯斗投手は依然戦列を離れたままだが、「リリーフ陣は甲斐野(央投手)が戻ってきたので、森の穴を埋める可能性がある」と野口氏。「千賀(滉大投手)が東京五輪で好投し、復活の気配を見せたのも大きい」と付け加えた。

昨季まで4年連続日本一の底力は計り知れず、「戦力が揃えば、一番強いチームであることは間違いない。4位とはいえ勝率5割ですから、勝ち始めれば首位をとらえるのもあっという間。順位だけで考えない方がいいと思います」と語った。

楽天は「茂木、岡島に期待」、ロッテは「美馬が復調すれば…」

田中将大投手が8年ぶりに復帰した楽天も、開幕前の下馬評通り安定した戦いぶり。特筆すべきは、4番に定着しリーグトップの66打点を挙げている島内宏明外野手の働きだろう。野口氏は「もともと出塁率の高い浅村(栄斗内野手)を誰が返すのかが課題のチームでしたが、島内がそれを見事に解消した」と評価。「今度は、島内を返してビッグイニングにつなげる選手が鍵になる。茂木(栄五郎内野手)や岡島(豪郎外野手)に期待がかかる」と分析する。

ロッテはレオネス・マーティン外野手、ブランドン・レアード内野手、荻野貴司外野手らがそろって打撃好調。「主将の中村(奨吾内野手)も好調で、先頭に立ってチームを引っ張る形ができているのが良い」と野口氏。投手陣もリリーフは相変わらず強力だが、先発には不安がある。石川歩投手が6月に右肘のクリーニング手術を受け、美馬学投手は3勝4敗、防御率6.02と振るわない。「ソフトバンクキラー(昨季は5勝1敗、対戦防御率2.70)の美馬が復調すれば、優勝への視界も開けてくるのではないか」と予測する。

西武は前半戦に故障者が続出し5位低迷中だが、ここにきて主力の顔ぶれがほぼ揃い、首位まで6.5ゲーム差は“ギリギリ挽回できる圏内”だろう。山川穂高内野手が打率.222、13本塁打35打点と当たりが出ていないのが懸念材料。日本ハムも打線の奮起が必要だ。

野口氏は「西武は山賊打線が迫力を取り戻すことが浮上の条件。山川の場合は打率はともかく、本塁打が量産態勢に入ればチームに勢いがつくと思います。日本ハムは大田(泰示外野手)らが打たないと苦しい」と見る。

いずれにせよ、現時点で最終順位を予想するのは極めて難しい混戦。本命のソフトバンクがやや後方から追いかける形だけに、なおさら面白い。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

© 株式会社Creative2