西武と日本ハム異例の「シーズン中の同一リーグ内トレード」の背景

西武から日本ハムに移籍する木村文紀外野手(左)と佐藤龍世内野手

両軍とも後半戦での巻き返しに余念がないか。西武と日本ハムの両球団が12日に2対2のトレードが合意したことを発表した。西武から日本ハムには木村文紀外野手(32)と佐藤龍世内野手(24)。日本ハムからは公文克彦投手(29)、平沼翔太内野手(23)が西武に移籍する。

13日から再開されるプロ野球の後半戦。その直前の電撃トレードに加え、シーズン中の同一リーグ内トレードは異例中の異例と言える。サインを含めたチーム事情や戦略が相手球団に筒抜けになるリスクがある中、両球団がこの時期にトレードを敢行した背景には何があるのか。

最大の要因は現在のパ・リーグの混戦状態だ。セ・リーグは上位3チームと下位3チームの差が現時点で10ゲーム以上ある一方、パは首位オリックスから5位西武までのゲーム差が6・5ゲーム。首位から最下位の日本ハムでも10ゲーム差だ。セとは異なり、後半戦の「開幕ダッシュ」次第ではどの球団も優勝、またはCS圏内の3位に滑り込める。この状況下であれば多少のリスクがあっても補強に踏み切り優勝を目指した方が得策だ。

しかも、西武は前半戦に故障者が続出した反面、プロ6年目の愛斗や台湾出身の同6年目・呉念庭、さらには2年目の岸など若手野手が次々に台頭。野手を中心に余剰人員が目立ち始めていた。手薄な救援投手陣の補強には交換人員がいる今が最適。タフネス救援左腕の公文が獲得できたとなれば最高の結果だろう。

一方の日本ハムもチーム打率が12球団最下位(2割3分2厘)と打撃陣が低迷。貧打解消が上位浮上の絶対条件だった。そんな中、チームの主砲・中田が同僚への暴力行為で出場停止に追い込まれた。その穴埋め要因の補強は急務だった。今季故障で出遅れたとはいえ、ファーム出場30試合で11本塁打20打点と長打もある木村の打力は大砲不在の日本ハムには魅力的。こうした諸条件が重なり電撃トレードが成立したようだ。

12日にメットライフドームで全体練習を行った西武の辻監督は練習後、今回のトレードについて「2人とも求められてその場所に行くわけですから。そこで活躍してほしいと思っています」とコメント。渡辺GMも「このたびのトレードは両チームの補強ポイントが合致したということです」と両軍のメリットを強調した。

し烈な混パの覇者を狙うにはなりふり構っていられない。両軍の後半戦に向けた秘めたる思いがこのトレードに見え隠れする。

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