トヨタ ハイラックスがなぜ今日本でヒットしているのか!? そのワケはど迫力デザインと驚異のリセールバリューにあった

東南アジア、そして北米市場で熱烈な支持を集めているピックアップトラック。一方日本では、トヨタ ハイラックスが2017年に13年ぶりに国内市場へ復活を果たしているが、現状この1台だけである。もちろん他の国々に比べピックアップが日本市場で万人受けするクルマではないが、現在ハイラックスは堅調なセールスを記録しているのだった。そこで気になるのが、なぜハイラックスはここまで人気を博しているのか? そして日本市場に復活できたワケを考えてみたい。

トヨタ 新型ハイラックス Z[2020年8月19日マイナーチェンジモデル] [photo:TOYOTA]

トヨタ ハイラックスは絶好調のセールスを記録中! 昨年比で倍以上の販売台数

2017年9月に13年振りの復活という形で日本に導入されたトヨタ ハイラックス。日本において現在正規販売で買える唯一のピックアップトラックである。

その販売は2018年から2020年は年間6000台程度、2021年は6月までで6080台と、単純計算では2020年までのほぼ倍と、堅調どころか絶好調となっている。

という背景もあり、ここではハイラックスが日本に再上陸できた理由と、ここまで売れている理由を考えてみた。

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ハイラックスが国内復活できたのは豊田章男社長の尽力によるもの

ハイラックスが国内市場に復活できた理由は簡単で、2009年にトヨタの社長に豊田章男氏が就任して以来、トヨタがアグレッシブになったからだろう。

2015年にデビューした現行プリウスから採用された新世代プラットフォームTNGA。走行性能と車内スペースなどを大幅にレベルアップさせたもので、現在販売されているほとんど全てのトヨタ車に採用されている, 画期的だったのは先代クラウン登場時に限定販売されたピンククラウンである。エクステリアだけでなく、内装にもピンクをあしらった仕上がりで今なお中古車市場で高値で取引されている
2015年にデビューした現行プリウスから採用された新世代プラットフォームTNGA。走行性能と車内スペースなどを大幅にレベルアップさせたもので、現在販売されているほとんど全てのトヨタ車に採用されている, 画期的だったのは先代クラウン登場時に限定販売されたピンククラウンである。エクステリアだけでなく、内装にもピンクをあしらった仕上がりで今なお中古車市場で高値で取引されている

ただ、自動車会社は大企業だけに、社長が変わったからといってすぐに目に見えた変化があるわけではない。しかし、それでも豊田社長は副社長時代から2012年登場の初代86の開発を後押しし、同じ年に登場した先代クラウンでは期間限定車ながらピンクのボディカラーを設定するといった変化が見えてきた。

こちらも限定販売であったが、2014年にはランドクルーザー70を復刻させるなど、これまでのトヨタでは考えられない試みを実施している

そして、2014年にはこちらも期間限定車ながらバンとピックアップトラックとなる非常にマニアックなランドクルーザー70を投入。そして2015年登場の現行プリウスからは、新世代プラットフォームのTNGAコンセプトの展開とトヨタの変化は本格化し、ハイラックスの日本再上陸も今になるとその1つと断言できる。

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ど迫力ボディとデザインの良さが人気の理由! 若年層からも支持

ハイラックスらしい無骨なデザインはそのままに、トレンドデザインを取り入れるなどヒットすること必至の仕上がりである

ハイラックスもマニアックなモデルだけに、2017年にハイラックスが日本再上陸した当初の販売目標は年2000台と、実験的な感もあった。それでもこれだけ売れている理由としては新鮮さ、そしてデザインにある。

ピックアップトラックを知る世代には懐かしく、知らない世代には新鮮かつカッコいいというインパクトは大きい。

特にクルマの性能が良くなった現代において「クルマはファッションの一部、つまりカッコよさや主張は重要」という面が強くなっているだけに、ハイラックスが人気になるのも納得だ。

全長5m超と巨大ボディだが、都内でもギリギリ使えるサイズ

全長5m以上と他の国産車と比べると大きいボディであるのも事実である。その一方で全幅1855mmに納められており、こちらに関しては他の国産モデルと同等のサイズをキープしている

そしてボディサイズが大きいと受け取られているが、ハイラックスの全長5340mm×全幅1855mm×全高1800mmというボディサイズは小山のようである。

しかし、東京都内でもハイラックスに近いボディサイズとなるハイエースのスーパーロングボディやセンチュリーがそれなりに走っているのもあり、筆者もこのくらいのボディサイズのクルマに乗ると、「かなり気は使うけど、東京都内でも使えなくはない」と感じるのも事実だ。

全幅が比較的小さいのも魅力

また、ハイラックスはラダーフレーム構造ということもありタイヤの切れ角が少ないためもあるのか小回りは効かない。だが、全幅は現代の基準ではそれほど大きくない1855mmというのは救いではある。

といったことを考えると、北海道をはじめとした地方を含めて日本全体を広い目で見れば、ハイラックスくらいのサイズのクルマを不便なく使える人も意外にいるということなのだろう。

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アフターパーツも大盛況! 自分だけの1台が欲しい層にピッタリ

SUVのように荷台を使用できるキャノピーが支持されている。トヨタ純正パーツはもちろんのこと社外品も数多く出回っているのだ

ハイラックスはディーラーオプションとなるGRの荷台のハードカバーやキャノピーをはじめ、海外で売れているモデルなのもあり、輸入品を含めるとアフターパーツは非常に多い。

このことによりハイエースのように自分好みの1台が造りやすい点も、売れている理由のひとつではないだろうか。

プラド以上のリセールバリューの良さ! 5年残価率は驚異の約6割

ハイラックスの中古車はそれなりに流通しているが、中古車価格はおおよそ300万円程度で取引されている。

2017年当時の初期モデルの上級グレード「Z」の価格が374万2000円だったのを考えると高く、リセールバリューは優秀だ。

また、その裏付けの1つとなる現在の残価設定ローンで買った際の残価率(最終回支払額)を最新モデルのZグレード(387万6000円)の消費税抜きの本体価格で見ていきたい。3年プランで259万6920円(74%)、4年プランでは228万6840円(65%)となる。そして5年プランで契約した場合でも197万6760円(56%)となっており、リセールバリューは非常に高いのだった。

ハイラックスの残価率は「ランドクルーザー200あるいは300に及ばないけど、非常に優秀なランドクルーザープラドに勝る」というイメージなのだ。

これだけ高く処分できれば安心なのに加え、リスク少なく処分でき、「勇気を出してハイラックスを試してみよう」という層がいそうなのも理解できる。

結論!独自の魅力があれば日本はヒットする市場

日本はハイラックスをはじめとしたマニアックなジャンルも、ランドクルーザーやジムニーといった本格オフローダー。そしてデリカD:5、86&BRZ;やロードスターなどを見ても分かるように、商品力があれば一定数が売れる市場である。

それだけにトヨタ以外のメーカーにも、海外専売車など魅力あるモデルは、勇気を持って日本導入を考えてほしいところだ。

【筆者:永田 恵一】

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