新型コロナウイルス感染拡大が止まらず、中等症患者も急増している。神奈川県内では1000人を超え、23カ所ある受け入れ医療機関の病床は逼迫(ひっぱく)している。その一つの県立循環器呼吸器病センター(横浜市金沢区)では、7月下旬から満床状態が続く。「重症ではないからと中等症を甘く見ないで」と警鐘を鳴らす医療従事者らが新型コロナと対峙(たいじ)する現場に足を踏み入れ、現状を取材した。
「感染病棟 面会者立ち入り禁止」─。県内の1日当たりの新規感染者が初めて2千人を超えた今月6日。約40人の新型コロナの中等症患者が入院する同センターの専用病棟の前には看板が立てられ、内部では医師や看護師らが慌ただしく働いていた。
「すごい勢いで増えた」「症状が悪い人が多い」。危機感がにじむ言葉が飛び交うナースステーションで「レッドゾーン」に立ち入るための防護服や二重マスク、顔を覆うシールドなどを、記者も装着した。瞬く間に熱気が立ち込めた。
病棟内の空気を外に漏らさない陰圧が施されたフロアでは、防護服姿の看護師が小走りで移動していた。患者データを読み込みながら、こまめに声掛けもする。手にした袋には、患者に代わってコンビニで買った飲み物などが入っている。
「お体いかがですか」「酸素(投与)はもうすぐ終わりますが、点滴はまだ外せませんよ」。男性医師の呼び掛けに、男性患者はか細い声を絞り出した。「大丈夫、なんとかね…」
髙橋理英看護課長は額に汗をにじませる。「中等症はあなどれない。あっという間に重症化する。症状が重い患者はこまめな見回りが必要です」
血中の酸素飽和度98%の患者が、トイレに行って戻る間、危険とされる80%台まで一気に低下することもある。髙橋課長は「人手も機材も限られている。どうかコロナを甘く見ないでほしい」と訴えた。