「青天を衝け」水戸藩士・菊池平八郎役の町田悠宇にインタビュー! 俳優になる前は飛行機の整備士!? 気になる素顔に迫る

吉沢亮が主演を務める、NHK総合ほかで放送中の大河ドラマ「青天を衝け」(日曜午後8:00ほか)。激動の時代を生きた“日本資本主義の父”と呼ばれる渋沢栄一の生涯を描いた本作で、物語は栄一が万国博覧会の使節団の一員としてパリへ向かう「パリ編」に突入。長く続いた江戸幕府も終わりに近づき、ますます見逃せない展開になっている。

栄一の人生の“キーマン”ともいえるのが、徳川昭武(板垣李光人)だ。異母兄の徳川慶喜(草彅剛)の名代としてパリ万博に出向き、栄一とは特別な絆を結ぶことになる。ドラマを見ていると、昭武の傍らにいる水戸藩士たちのこわもてさがどうしても気になる。強い尊王攘夷の思想を持ち、パリでも大和魂を強く見せつけ、時に周りを困惑させる彼らだが、中でもひときわ眼力強く“殿”への忠誠心を見せる武士が菊池平八郎だ。第23回の放送で断髪をするシーンでは、あまりの彼の迫力にSNS上でも話題となった。

SNSなどで話題となった第23回の断髪シーン

演じているのは福岡県出身の俳優・町田悠宇。本格的に東京へ進出したのは2020年のことで、すぐさま今回の平八郎役に大抜てきされた。劇中で圧倒的な存在感を放つ彼は一体どんな人物だろうか? 大河ドラマのことや、町田自身のことについて話を聞いた。

――まず、この仕事を始めるきっかけを教えてください。

「はい。えっと…。僕飛行機の整備士として働いていた時期がありまして。その仕事を3年ほどやっていた頃、シンガポールに異動の辞令が出たんです。その時、日本を離れたくないな…と思って。で、いろいろ考えて転職しようと思った時に、漠然と芸能界への華やかなイメージに対して『いいなぁ』と思ったというのが始まりです」

――整備士から芸能界とは、異色の経歴ですよね。飛行機がお好きだったんですか?

「そうですね。学生時代に野球をやっていたんですけど。野球と同じくらい飛行機が好きでした。高校生の時は、授業よりも部活に行けばそれでいいと思ってたんですよ(笑)。だからちょっとけがすると『病院行ってから行きます』って学校に連絡して、病院行った帰りにそのまま空港に寄って、展望デッキでお母さんが作ってくれた弁当を1人で食べながら、飛行機を眺めてちょっとサボるっていうことをよくしてました(笑)」

――そして異動の辞令がきっかけで芸能界へ…というわけですね。

「はい。芸能事務所に入ったんですけど、まずやることになったのが、事務所のスカウトマンだったんです(笑)」

――表に出るお仕事ではなく?(笑)

「はい(笑)。でもまぁ、華やかな世界を見てみたいというザックリとした感じで入ったので、そんなにこだわりがあったわけでもないですし。僕としては、まぁそれならそれでやりますって感じだったんです。で、スカウト活動をしながらも、事務所に来たオーディションの情報とかを見つけたら応募して。受かったらラッキー的な。でもそういうことをしだすと、徐々にやっぱり“表方”って楽しいなって思うようになったんです。そのうち事務所には僕がスカウトした子も含めて、男の子が増えてきて。このメンバーで何かできないかなぁ…って考えた時に、いろいろな方から助言をいただいて、舞台をやることになりました」

――それが演劇チーム・TEAM LOCO(町田、柳鶴マコト、ジェフ太郎、東ヨシアキ)ですか?

「はい。そうです。でもいざやろうとしても『舞台ってどうやればいいの?』って感じで。とにかく手探りでした。会場も初めはライブハウスだったんで、ワンドリンク制にしたんですけど、上演中にお客さんがバーカウンターに立っちゃって(笑)。氷のガラガラッって音で僕たちのセリフが聞こえなくなるとか(笑)。そういう経験をしながら舞台を続けていく中で“悔しい”っていう気持ちが芽生えて、このままじゃダメだと。そこから役者という仕事に向き合い始めたのかなという気がします」

――そうやってだんだん活躍の場を広げ…今回「青天を衝け」への出演となったわけですが、決まった時、どのように思いましたか?

「よっしゃ~!っていう、うれしい気持ちはもちろんなんですけど…。正直ピンと来なかったです。だって大河ドラマって“国民的ドラマ”ですし」

――ご家族をはじめ、周囲の反応はいかがでしたか?

「福岡で活動していた時から応援してくださっていた方たちは、ものすごい喜んでくれましたね。逆に家族は『へぇ~』って言ってました(笑)。意外と冷静でした(笑)」

――今回演じる水戸藩士・菊池平八郎という役について、役作りなどは何かされましたか?

「刀は重いし、それを腰に差して動いてるってことはまずその体になっていないといけないなと思いまして。武士の所作稽古も何度か受けたんですが、それと並行して自分で体作りをするところから始めました。でも、普通にウエイトトレーニングをするっていうのが、自分の中でしっくりこなくて。当時の侍がダンベルを持ち上げてるわけないので。で、刀(模造刀)を振り回さなきゃダメだと思って、自宅裏の山みたいなところで、1人で刀持って振り回してました。人のいないところでやってたんたんですけど、今考えたらヤバイやつですよね(笑)。あとは、近所の小川でちょっと大きい石みたいなのを見つけて。それを持ち上げて、ちょっと横に移動させるっていうトレーニングとかもしてました(笑)。昔の人だったらどうやって体を鍛えるかなって自分なりに想像を膨らませたんですよ。大きい石なら絶対昔もあっただろうし。結果、そんなことやってたら筋肉がついて体重が5kg増えました! 地球の“バイタリティー”っていうか…エネルギーを吸収して体が大きくなっていったんです(笑)」

――想像を超えた役作りに驚きです(笑)。では平八郎へのイメージはどうでしたか?

「武士の中でも、水戸藩の武士は特に堅物で思想が偏ってるっていうイメージでした。その理由を自分なりに掘り下げたんですけど。殿(昭武)への忠誠心っていうところから、自分たちが身を犠牲にしてでも殿を守るという強い思いを膨らませた結果、ああいう尊王攘夷の思想になったのかなって。荒くれ者って思われがちなんですけど、“いいやつ”っていうのが根っこにあって。真っすぐなやつっていうんですかね。そういうキャラクターだということを心がけて役作りをしました」

――収録現場の雰囲気はどんな感じでしたか?

「やっぱり役者陣もスタッフの皆さんも、一流の方たちが集まっているわけじゃないですか。規模でいっても今までに経験したことないし、セットも想像を超えるすごさだったし。これが大河ドラマなんだっていう重みを感じました。でも、それにのまれることだけはしないように気を付けていました。萎縮しちゃったら、誰にもいいことないですし。背伸びしてよく見せようとかせず、今までやってきた自分の自信が持てるところを前面に出そうと思いました」

――その時に考えたご自身の“強み”とは?

「僕がTEAM LOCOで仲間たちと何やってきたかって思い返したら、“大きい声”だったんですよね(笑)。とにかくでかい声出そうぜっていつも言ってやってきたんです。だからそれを意識して現場に臨んだんですけど。撮影終わって最終日に監督さんから『今編集してるけど、編集室で町田さんがいいって話題になってますよ』って声かけてもらって。それ聞いて本当にうれしかったですね」

――今後演じてみたい役柄などはありますか?

「ちょっと前まではありました。でも最近思うのは、まだそういうのは言えないなと。与えられたもの、もしくは自分で得たものを、最大限に魅力的に演じようと。その役が台本の中でどういう役割なのかというのをしっかり認識した上で、ベストなお芝居をするというのが、今の自分の中での“テーマ”です」

――目標にしている方などはいますか?

「そういうのを作ってしまうと、それがゴールになってしまうような気がして、なるべくそういう“目標”は作らないようにしてます。でもすごいなと思うのは、役所広司さんです。どんな役を演じても、全部その“役”に見えるってすごいなと思います」

――では、最後に読者の皆さんへ一言お願いします。

「福岡の時代から応援してくださる方たちにいつか恩返しがしたくて。僕が今東京で頑張れているエネルギーの一つはTEAM LOCOの存在なので。今はメンバーそれぞれが自分のフィールドで頑張っていますが、しっかりパワーアップして、福岡でまた舞台をするっていうことを目標に頑張りたいって思っています。かけがえのない仲間ですから。なので、引き続き応援していただけたらうれしいです。よろしくお願いします」

【プロフィール】

町田悠宇(まちだ ゆう)
1988年8月9日生まれ。福岡県出身。身長184cm。福岡の演劇チーム・TEAM LOCO所属。映画「めんたいぴりり」や「ロックンロール・ストリップ」、舞台「投げられやすい石」などに出演。

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