文通ボランティア「ハトさんゆうびん」 コロナ禍に温かい交流

届いた手紙を読む駒井さん(左)と木谷さん=長崎市文教町、長崎大

 新型コロナ禍で人と触れ合う機会が制限される中、長崎県内の学生ボランティア団体「ハトさんゆうびん」(約25人)が、地域の高齢者や子どもたちと文通をして交流する活動に取り組んでいる。

 共同代表を務めるのが長崎大多文化社会学部3年の木谷郁佳さん(21)と駒井美優さん(20)。大学が学生ボランティアを支援する「長崎大やってみゅーでスク・U-サポ事務局」に登録し、4月に活動を始めた。
 現在、西彼長与町の自治会に声を掛けて月1回程度文通をしている。手紙は、大学の事務局を通じてまとめて自治会に送られ、返事もまとめて届く。手紙を送る日が近づくと、事務局に設置された“ポスト”は、学生のカラフルな手紙で埋まっていく。
 活動を始めたきっかけは木谷さんと駒井さんの散歩中のやりとりだった。
 木谷さんは新聞で読んだ孤独死の記事が頭に引っ掛かっていた。長崎は高齢者が多い。コロナ流行後、人と人のつながりは希薄になっている。「何かできることはないか…」。対面でなくても高齢者にアプローチできる方法として「手紙」を考えていた。
 孤独を感じていたのは学生側も同じだった。オンライン授業になり、友達に会えず、提出課題も多い。駒井さんは「精神がやられて落ち込んでいた」。
 2人は散歩中に互いの思いを打ち明けながら、それまでは気付かなかったが、1人きりのお年寄りの姿が多いことに驚いた。「あの人も1人だね」。2人は文通活動のアイデアを実行に移す決心をした。
 「みかんさんへ」「長与のばあばより」-。手紙はお互いにニックネームでやりとりをする。駒井さんはイラストを使って身近な話題を紹介する手書きの「ハトさんゆうびんしんぶん」も作製し、同封。最初のうちは高齢者向けだったが、自治会の要望で小学生宛にも書いている。
 静岡県出身の駒井さんは埼玉県で暮らす祖母にしばらく会えていない。最近は顔も知らない文通相手を「もう1人のおばあちゃんみたい」と思っている。「届いた手紙を開封するわくわく感がすごい幸せ。手紙を読んでいる時間は救われる」と笑みをこぼす。
 「誰にでも伝えたい思いがある。文通は共同作業をしているみたい。文通を長く続け、やりとりする自治会も増やしたい」と木谷さん。電話でもない。メールでもない。コロナ禍をきっかけに始まった文通の温かさや人のつながりの大切さを、2人はあらためてかみしめている。

手紙に同封する「ハトさんゆうびんしんぶん」

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