ハイレベルすぎるパ新人王争い 宮城大弥、伊藤大海、早川隆久の特徴と凄みとは?

日本ハム・伊藤大海、楽天・早川隆久、オリックス・宮城大弥(左から)【画像:パーソル パ・リーグTV】

3人とも選びたい!? 例年なら文句なしの成績残す

2021年のパ・リーグ新人王争いが、まれにみるハイレベルとなっている。オリックスの宮城大弥投手、日本ハムの伊藤大海投手、楽天の早川隆久投手と、ここ2年のドラフトで1位指名された若き好投手が先発ローテーションの一角を守り、順調に勝ち星を積み上げているためだ。

宮城は8月13日のロッテ戦に勝利し、リーグ2桁勝利一番乗り。10勝1敗、防御率2.15で、高卒2年目にしてタイトル争いに加わっている。また、伊藤もリーグ最下位と苦しむチームで7勝(4敗)し、防御率2.42と素晴らしい活躍。さらに、2020年のドラフトの目玉だった早川投手もここまで7勝(3敗)、防御率3.39を記録しており、前評判通りの堂々たるピッチングを展開している。

3人とも、故障なくシーズンを戦い抜けば2桁勝利が可能なペースで白星を重ねており、候補の少ない年であれば文句なしで新人王に輝くレベルの成績を残しそうだ。今回は、3投手の経歴や投球スタイルを紹介するとともに、各種指標から見えてくるそれぞれの特徴についても考えていきたい。

引き出しの多さが魅力の伊藤、早川は球種の組み合わせが絶妙

伊藤は苫小牧駒大から、2020年のドラフト1位で日本ハムに入団。地元出身のドラ1選手として期待を集め、開幕後はそれを上回る圧巻の投球を披露している。チームの不振から、序盤は援護や勝ち星に恵まれない時期もあったが、崩れることなく安定した投球を継続。その結果、5月28日の中日戦から6連勝、この間は6試合連続で6回以上を投げ、2失点以下と内容も抜群だった。東京五輪を戦った侍ジャパンに追加召集され、リリーフとして金メダルに貢献したのは記憶に新しい。

150キロを超える速球を軸に、鋭く落ちるフォークと変化の大きなスライダーで空振りを奪うのが持ち味だ。さらにカットボールでゴロを打たせることもできる。他にも、チェンジアップ、カーブ、ツーシームと多彩な球種を持ち、新人離れした引き出しの多さが安定感の源だ。

昨秋のドラフトで4球団が1位競合した早川は、早大から楽天に入団。木更津総合高時代に甲子園で活躍し、大学でもエースとして君臨した。満を持して進んだプロの舞台では3月28日の日本ハム戦に先発し、6回無失点でプロ初登板初勝利を記録すると、4月18日の日本ハム戦から6月6日の広島戦まで自身6連勝を記録。その間、6回3失点以下のクオリティスタート達成は8試合中3試合と半数未満でも、かつての田中将大投手のような“勝ち運”が光った。さらに5月16日のオリックス戦では、わずか98球でプロ初完封という離れ業を演じてもいる。

こちらも150キロ台に達する速球を軸に、130キロ台中盤から140キロの高速チェンジアップ、同じ球速帯のカットボール、120キロ台でカットよりも大きく変化するスライダー、ブレーキの利いたカーブを持つ。各球種が相乗効果を発揮するような、実戦的な投球スタイルが特徴だ。

宮城はすでにリーグ代表する左腕 3人とも特徴異なるのが魅力

宮城は沖縄・興南高から、2019年のドラフト1位でオリックスに入団。高卒1年目から1軍3試合に登板し、プロ初勝利も記録した。今季は開幕からローテーションに定着し、19歳の若さにして、リーグを代表する先発左腕へと成長を遂げつつある。15度の先発全試合で5回以上を消化。自責点が4を超えたのは1度だけと抜群の安定感を発揮している。勝率.909はリーグトップ、防御率と奪三振は、同僚の山本由伸投手に次いで2位だ。

速球は140キロ台と目を見張る速さがあるわけではないが、横に変化するスライダー、縦に落ちるチェンジアップ、より遅い球速から大きく曲がるカーブはいずれも、空振りを奪える変化量を持つ。打者にとっては非常に的を絞りづらく、緩急をつけることで速球も数字以上の威力を発揮する。

最後に、各種指標から3人の特徴を読み取ってみよう。

伊藤は82回1/3を投げ87奪三振と、投球回を上回る奪三振を記録している。制球には課題を残すものの、1年目からこれだけのペースで三振を奪っているのは特筆ものだ。成長を続けていけば、将来的に最多奪三振のタイトルを獲る可能性もあるだろう。

宮城も100回1/3で96奪三振と、奪三振は投球回とほぼ同じ。加えて9回あたりの与四球が2.24個と水準以上の制球力を備える。一般的に3.50を上回れば優秀とされるK/BBも、3.84とかなり優れている。奪三振と制球の双方を高いレベルで両立していることがわかる。

早川は奪三振率が8.47と十分に高い水準ではあるものの、2人には多少後れを取っている。ただ最大の長所は、なんといっても制球力。与四球率が1.69、K/BBが5.00と、いずれも新人ながら、既に球界屈指のレベルにある。

最も奪三振能力に長けた伊藤、奪三振と制球力の双方で高水準の宮城、抜群の制球力を持つ早川と、各投手の長所が異なるのが今季の新人王争いの特徴だ。

3投手の特徴や持ち球を把握して投球を見れば、より具体的に“良さ”が浮かび上がってくるかもしれない。若き好投手が見せる圧巻のピッチングと、熾烈さを極める新人王争いから、最後まで目を離すことができない。(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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